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「アクチュアリテ 食」関口涼子

フランスにも広がるおにぎりの豊かさ


パリのおにぎり専門店

 ここ数年日本ではおにぎりがブームだが、実はフランスにもそのブームがすでにやってきている。パリには十数軒のおにぎり専門店ができ、駅や空港の売店、スーパーマーケットの棚にもおにぎりが並ぶという具合だ。おにぎりはまたたく間にフランス人の心と胃袋を摑んだようだ。
 最近の食べ物のブームの大方がそうであるように、おにぎりもフランスだけではなく、ヨーロッパの他の国やニューヨークなどアメリカの大都市でも人気の食品となっている。フランスに関していえば、すでに寿司が広く知られていることにより、日本の白米に抵抗がなくなっていること、現代のヘルシー志向に応えていること、また、具材によって、お腹にきちんと溜まるものを食べたい人にも、ベジタリアンにもヴィーガンにも対応することができる点が好まれている。
 価格は1つが2~4ユーロ(330~660円)と、日本の感覚からすれば決して安くはないが、その多くが比較的大きなサイズであること、サンドイッチを買っても昨今は6~7ユーロすることを考えると、現地では妥当な値段だといえよう。
 梅干しや高菜など日本らしい具も並ぶ中、スパイシーチキン、ツナマヨなどパンチのある具がフランス人にはうけているらしい。また、カレー味の玄米にドライトマトの具など、変わり種を提供している店もある。
 いわゆる日本的なおにぎりだけではなく、おにぎりというコンセプト自体がさまざまな形で展開しつつある。レストランでも、主菜の付け合わせとして可愛らしいおにぎりが脇に置かれることもあり、ガストロノミーの域に入る高級店でもおにぎりにインスピレーションを受けた品を見かけるようになった。
 実はフランスではおにぎりブーム以前すでに「フリカケ」が食べ物に感度の良い人たちの間では広く知られていた。これもまた、オイルなどカロリーの高い素材を使うことなく食べ物に風味を加えられるということで歓迎されたのだろう。フランスのふりかけメーカーもあるくらいだ。そういう意味では、フランスではおにぎりを受け入れる素地がすでにできていたとも言える。また、ハンバーガーブームなど、いわゆる間食的な食べ物、スナッキングの文化が広まっていたことも背景にあるのだろう。
 かつての堅苦しい和食のイメージとは打って変わって、カレーや唐揚げ、鯛焼きの専門店、オムライスのレストランなど、最近では日本の日常生活に密着した食が楽しまれるようになっている。次にはどんな意外な日本の食べ物がフランス人の間で話題になるのか楽しみだ。

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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