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「アクチュアリテ 食」関口涼子

ピクニックへのフランス人の愛とこだわり

 フランス人が唯一不平を言うのを忘れ、子どものように生き生きする夏のヴァカンスシーズンがやってきた。田舎の家でガーデニングやサイクリング、海水浴など自然に近い生活を楽しむ彼らにとって、ピクニックは欠かせない。そんな時期にうってつけの本、Passion Pique-Niques(「パッション ピクニック」)が5月末に刊行された。


ラファエル・マルシャル著 Passion Pique-Niques

 作者は、料理ジャーナリストのラファエル・マルシャル。レストラン評からテレビの食番組まで幅広く活躍する彼女は、読者に近い目線、気さくな文体やルックスで若いフードファンに人気が高い。

 ピクニックというと、私たちは公園で広げるお弁当や花見を想像するが(彼女自身、桜で有名なパリ郊外のソー公園での花見が大好きだという)、この本で紹介されるピクニックシーンは実に多様だ。列車や自動車、船の中、登山、スキー場、海辺、ワイン畑……。仕事場に美味しいご飯を持っていくのもピクニックのうち、と著者は言う。それぞれの場に合った、美味しそうなサンドイッチやタルト、巨大クッキー、ローストした野菜、春巻き、ファラフェル、手作りレモネードやバーベキューなど、簡単に作れるレシピの数々が紹介されている。彼女の両親自身が、外出先でどうでもいいものを食べるくらいなら美味しい食べ物を持って外でピクニック、という考えの持ち主で、スキーに出かけても、ありきたりなレストランで妥協するよりはと、美味しい食材が売られている店をチェックし、旅行先で買い求めては楽しんでいたという。

 この本には、著者以外にも、彼女の友人のソムリエやシェフ、ジャーナリストたちが出てくるが、それぞれがピクニックを語らせれば一家言あり、フランス人はこんなにピクニックに情熱を抱いていたのか! と驚く。

 去年に企画されたこの本は、ちょうど3月に校了したのだという。フランスで新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加していた頃で、いつ事態が収束するのか見えないまま、戸外での食事がテーマの本を出してもいいのか、出版社も著者自身も危惧していたらしい。だが蓋を開けてみれば、発売すぐに様々な雑誌やテレビで紹介され、書店やレストランでの売れ行きもすこぶる好調だとのこと。どれほど人々が自然に触れる生活を待ち望んでいたかがわかる格好の新刊だ。

◇初出=『ふらんす』2020年8月号

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著者略歴

  1. 関口涼子(せきぐち・りょうこ)

    著述家・翻訳家。著書Fade、La voix sombre、訳書シャモワゾー『素晴らしきソリボ』

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