女性シェフたちの活躍
2017年夏、ヴェラーヌ・フレディアーニ監督のÀ la recherche des femmes chefs(女性シェフを探して)という映画が公開された。上映館数は決して多くなかったが、その反響はじわじわと現れている。
同監督の監修により最近刊行されたCheffes(「女性シェフたち」)、Elles cuisinent(「彼女たちは料理をする」)の2冊はその良い例だろう。
前者はフランスで女性シェフが腕をふるうレストランを紹介した本で、550店以上が掲載されている。インタビュー記事もあるが、基本的に、各店の描写、料理ジャンルや平均価格など、実際にガイドブックとして使えるようにできている。ミシュランガイドにおいて男性シェフの割合が極めて高いのは知られているが、本書はそういった傾向への反発も含め、ミシュランの星格付けの発表時期にぶつけて刊行されている。
後者は映画「女性シェフを探して」の書籍化といったもので、世界各地で活躍する女性シェフたちへのインタビュー、彼女たちが働く店や料理の写真、レシピなどで構成されている。
私自身、フランスの女性シェフレストランがこれほど多いとは知らなかった。メディアで取り上げられることが少なければ、優秀な女性シェフは少ないと思い込んでしまいがちだ。このようなガイドブックを作るのは並大抵ではなかったと思うが、おかげで、女性シェフの存在がより可視化されたのは間違いない。
料理業界では、他にも、オーガニックワイン生産者、都市部での野菜栽培、古代小麦を使ったパン作りや開発予定地区での牧畜など、オリジナルな試みを行う女性たちの活動を紹介するNéo paysannes(「新しい女農民たち」)が出版されたばかりだ。小説では、マリー・ンディアイの心打つ作品、La Cheffe, roman d’une cuisinière (「女性シェフ、一人の女料理人の物語)」が2016 年に書かれている。
フランスでは、音楽分野でも、五十数人の女性現代作曲家の作品を紹介する本が今月刊行され、コンサートやシンポジウムなどが3月いっぱい行われている。女性たちの置かれた状況の改善を要求するのと並行して、各界で女性たちが活躍する様子を伝えるこういった活動は今後必要性を増すばかりだろう。
Elles cuisinent と Cheffes
◇初出=『ふらんす』2019年4月号