長い営業停止がようやく明けて……
この1年間、各国でせわしなく外出制限と規制解除が交互に行われ、今や何度目になったかわからないほどだが、フランスでは5月からやっと段階的な規制解除が行われる。ワクチン接種が伴っていることもあり、今回が決定的な解除になるだろうと誰もが期待しているところだ。秋から半年閉まっていた、美術館や劇場などの文化施設とともに、レストランも5月19日からは営業可能になった。まずはテラスでの営業、6月2日からは人数を制限してだが屋内でも食事ができる。6月いっぱいは21時以降の外出制限が続くが、それでも外での会食が可能になるのは大きな変化だ。
日本と異なり、営業停止している間は一部休業手当が出たため、去年懸念されていたような閉店の危機に陥っている店の話は実はそれほど聞かないのだが、それでも営業再開に際し、問題がないわけではない。
一つは、人手不足だ。いつまで続くかわからない店の営業停止に、他の業種に移ったり、他の町や店に移った人も少なくない。2020年には10万人、今年に入ってからも3万人が外食業界から離れたという数字が出ている。その多くは契約社員だということだが、すでに外食産業は人手不足に悩んでいたため、現在多くの店で新たなスタッフを懸命に探している。スタッフが集まらず、再開にこぎつけない店さえある。
営業停止中、今までの朝から晩までノンストップという外食産業の働き方に本質的な疑問を抱いた若い人は多く、それが外食産業の今回の人手不足を生んだと言えるだろう。
そして、半年間料理をしないことによって、腕が落ちてしまったシェフもいる。スポーツ選手のようなものだから、毎日特訓をしないせいで勘が鈍るのは仕方がない。この間デリバリーの料理を作っていた店にしても、いつもとは異なり、ストリートフードや弁当を準備していたわけで、開店してもしばらくはリハビリ期間となるだろう。サービスにしても、また一晩中立っているリズムに戻れるのかと不安を漏らした者もいる。
そして何より、この半年間、お客との接触がなかったというのは大きいだろう。お客の中には、無体なことを言う者もいるだろうが、彼らの指摘がその後の料理の向上につながる場合もある。対話なくして料理は成り立たないはずで、それはまるで今まで半年黙っていた人が突然また話し出さなければならないようなものだ。
社会的交流の場としてのカフェやレストランが再び開かれるのは誰にとっても嬉しいことで、しばらくは高揚感が続くだろうが、その熱気が一旦落ち着いたときに、家での食事に慣れてしまったフランス人が外食にお金を落とすことに再び慣れることができるのか。今後の展開をしばらく見守っていくしかないだろう。
◇初出=『ふらんす』2021年7月号