フランスの秋を彩る食のイベント
9月の新学期を迎えると共に、食欲の秋にふさわしく、フランスでは食に関する様々な催し物が開催される。リールの食フェステイバル、ワイン生産地での「葡萄収穫祭」、パリの「フードテンプル」など、毎週のようにイベントがあり、どこに足を運んだらよいかわからなくなるほどだ。また、9月21日から23日までは、「ガストロノミの祭典─フランスの味Fête de la Gastronomie-Goût de France」の名のもと、各地で様々な催し物が実施された。これは2010年に、フランス料理がユネスコの文化遺産に登録されたのを受けて始まった。フランスの料理文化を海外に伝えると同時に、自国の食材の良さを知らせる目的で、2011年から経済庁が企画しているものだ。
ファーマーズマーケットや、様々な料理コンクールやデモンストレーション、料理教室、試食会などがフランス全土で催され、その土地の特産品を生かした企画が立てられている。また、エッフェル塔の近くには「ガストロノミ国際村」が3日間作られ、フランス各地の名物を調理するスタンドが観光客の舌を喜ばせた。
このイベントは、6月の夏至に行われる「fête de la musique 音楽の祭典」に倣って、フランス人だけではなく、ツーリストも呼び込む経済効果を狙っている。2017年には、総計1万以上のイベントがこの3日間に実施され、300万人の集客力を誇った。
フランスには「味覚の一週間La Semaine du Goût」というイベントが10月にあるが、こちらは味覚の教育活動を目的として30年近く前から開催されている。小学校での味覚ワークショップから、大学にシェフを呼んでの食文化に関する講義まで幅広く、最近は海外の都市でも開かれるようになり、日本でも行われているから聞いたことのある人もいるかもしれない(日本では10月15日から21日まで「味覚の授業」「味覚の食卓」「味覚のアトリエ」の3 つの柱で各種企画が実施された。今年で開催8年目)。このイベントは、政府主導ではなく、独立機関で、教育省の協力を得て行われているものだ。
自分たちの食文化を、経済的にも、文化的にもフルに活用し、また、次代に伝えることでその資産を絶やさないようにするという意思が、これらのイベントからは明確に、かつ力強く伝わってくる。「ガストロノミの祭典」は来年から方針も日付も変わり(3月22日から24日まで)、今までの大衆的な料理の祝祭という性質を失ってしまうのではと懸念している人もいるが、マクロン大統領自らこの決定をなしたという点からも、フランスにおいては、食と政治が深く関わっていることが感じられるだろう。
「味覚の一週間」(日本版)公式サイト http://legout.jp
◇初出=『ふらんす』2018年11月号