ハーブをまるごと楽しむための1冊
©Nathalie Carnet
ハーブやエディブルフラワーなどを自ら栽培して料理に使う傾向はここ最近に始まったことではなく、関係書籍も少なくないが、今回は「園芸料理家」のパスカル・ガルブの新刊『庭園のさまざまな風味』を紹介したい。彼は専門家として多くのシェフにハーブ使いのアドバイスをしていることでも知られ、これまでにも十数冊の書籍を出版しているが、本書はその中でも最も総合的かつわかりやすい。
この本には、どのようにして「味わって楽しむ庭造り」をするかが丁寧に書かれている。四季にわたってハーブを楽しむためにはどんな種類を植えたらよいかだけではなく、植物を香りや味(酸味、苦み、辛味、甘み、スパイシー、ソルティー、フローラル、ヨード風味……)などで22種類に分け、多様な風味がいつでも楽しめるよう紹介している。また、庭の面積、園芸にどのくらいの時間を費やせるかによって植える植物も異なることについて、またどのくらいの量を植えたらバランスがいいかについての項もある。わたしたちになじみ深く、庭に植えられていることも多いものの、食用にはならなかったり、毒がある植物についても説明がある。もちろん、栽培方法や地植えが適しているのか、プランターが適しているのかについてのアドヴァイス、また接ぎ木、種取りなどのやり方も書かれているし、摘みとった花やハーブをどのように保存するかも学ぶことができる。90種類の植物について、それぞれどの部分を口にすることができるかを知ることができ、また、実際にそれらのハーブや花々を組み合わせた32のレシピも掲載されている。柚子胡椒からインスピレーションを受けた「ミックス柑橘類胡椒」や花びらをミックスした香り高い塩、芍薬の花のピクルス、ルバーブのジュース、レモングラスを使ったヴィネグレットソースなどをはじめとして、ひよこ豆と花のサラダ、フラワーバーガー、カレー粉の代わりにカレーの香りがするハーブを使用した「いんげんカレー」、花のタルト、ベリー類のタルタルにミントのゼリーのような簡単なものから、また、三つ星シェフのミシェル・ブラの料理からインスピレーションを受けたレシピといった洗練された料理まで、自分の料理のレベルに合わせて実際にハーブ使いが楽しめるようになっている。
園芸専門家によるハーブの専門本や、シェフが書いたさまざまなハーブを用いたレシピ本はもちろん今までにも存在するが、両方についての知識を持ち合わせている著者はなかなかいない。隅々まで気配りの効いた、何かと役に立つ1冊だと言えるだろう。