パリのブックフェアで料理を供する

書籍見本市期間中の食イベントのポスター
パリの書籍見本市Festival du livreは、ほぼ半世紀前から存在する歴史の長い見本市だ。毎年春に行われるこのイベントは、最初は海外版権の交渉の場として機能していたが、この数年は一般客向けのイベントに変化している。3年前からは、今までの国際見本市が多く行われる、パリ15区、ポルト・ド・ヴェルサイユの見本市会場からパリ万博の際にシャンゼリゼ通り沿いに建てられたグラン・パレに場所を変え、350の出版社が参加し、週末3日間で10万人以上の入場客を誇っている。
今回その見本市に新しいイベントが加わった。書籍と料理を組み合わせるというものだ。シェフの本やレシピ本に掲載されている料理が食べられるというケースもあるが、もっと広く、文学やグラフィックノベルなどからインスピレーションを受けたシェフが料理を提供する場合もある。メニューは2つで、7種類の料理や飲物のコースが36ユーロ、11種類のコースが48ユーロ。それぞれ「パスポート」というコンセプトで、オリエントエキスプレスで旅をするように、インド、韓国、ケベック、アイスランドなどの国、または都市をテーマとしてブカレスト、イスタンブール、トビリシなど様々な土地の料理が食べられるコンセプトなのが楽しい。それぞれ500食限定だが、開催前に予約チケットが完売したという人気ぶりだ。
それ以外にも料理を巡るイベントには、シェフを巡ってのマスタークラス、作家と食を巡る思い出のトーク、美術作品の中の食についての講演会、詩と食、食とエコロジーの対談など幅広い。
この書籍見本市は、ターゲットを業界人から一般向けに変えてから、内容も変化させてきた。単なる作家のトークだけでなく、朗読コンクールやパフォーマンス、講演会なども増えている。今回の試みはその一環だと言えるだろう。とはいえ、見本市はその業界についての考察がなされる機会であることには間違いなく、それは農業見本市であれ書籍見本市であれ変わらない。コロナ収束以降書籍の売上が落ちていることはたびたび指摘されており、料理本にしても、長い間多くの出版社を経済的に支えてきたジャンルだったが、最近はその売上に影が差している。今回のイベントはそういった影を見本市の間だけでも拭おうという試みなのだろうか。少なくとも、ここで提供される料理がフランス料理だけでなく、世界の様々な料理であるのは風通しがいい視点だし、具体的な味を通じて、文学作品などに興味を持つ人が増えるのならそれに越したことはないだろう。



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