夏の美術館巡り
オリンピック・パラリンピック競技の期間中、パリでは美術館がガラガラという思いがけない「オリンピック効果」が生まれた。人混みに邪魔されずにじっくりと作品を鑑賞できると、期間中に有名美術館をいくつもハシゴした美術愛好家も多い。パリ以外でもアートを存分に満喫できる充実した催しが目白押しだった。まず、6ヶ月間にわたってノルマンディー各地で開催されてきた印象派フェスティバルが9月末に公式に終了。9月21日には、人気演出家ボブ・ウィルソンが手がけたルーアン大聖堂ファサードのマッピングに合わせ、オリンピック開会式への出演で一躍世界的に知られるようになったバルバラ・ビュッチュ(全身を青く塗ったバッカス神が登場する古代ギリシャの神々の饗宴を表現したシーンで、後光がさしたアポロン神に扮していた女性)がDJセットを手がけるという、大規模な閉会イベントが。南仏エクサンプロヴァンスのコーモン・アートセンターでは、印象派に関連して、「ピエール・ボナールと日本」展が盛況を博している(10月6日まで)。ジャポニズム真っ只中の1880年代終わりから90年代のパリで学び、1888年結成のナビ派の画家の中で「最も日本風」と称されたボナール。日本美術から得たインスピレーションを彼がどのように作品に取り込んでいったかを俯瞰できる展示となっている。コーモン・アートセンターから徒歩約5分のグラネ美術館では、イタリア遊学後プロヴァンス地方に腰を落ち着けて活躍したルイ14世の画家、ジャン・ダレ(1614-1668)の初展覧会が(9月29日まで)。当時非常に重要な役割を果たしていたにもかかわらずこれまであまり知られていなかった画家の業績を、宗教画を中心に紹介する。さらに、協賛する南仏15の美術館所蔵のダレ作品を鑑賞することで、彼がこの地方に残した美術遺産をさらに深く知ることができる。一般にはほとんど無名の画家の展覧会を地方全土あげてのイベントにした点で、美術展そのものの開催方法にも示唆を投げかける、興味深い催しだ。
モナコのグリマルディ・フォーラムでは、ウィリアム・ターナー展が。イギリスのテート美術館所蔵のターナーの風景画80点を中心に、現代作家の作品と対比させて見せる。テート美術館が一度にこれだけの作品を貸し出すのは今回が初めてという貴重な展覧会となった。
ボブ・ウィルソンによるルーアン大聖堂のマッピング1(5月末撮影)© Victoria Okada
ボブ・ウィルソンによるルーアン大聖堂のマッピング2(5月末撮影)© Victoria Okada
ボブ・ウィルソンによるルーアン大聖堂のマッピング3(5月末撮影)© Victoria Okada
ボブ・ウィルソンによるルーアン大聖堂のマッピング4(5月末撮影)© Victoria Okada
ボブ・ウィルソンによるルーアン大聖堂のマッピング5(5月末撮影)© Victoria Okada
Bonnard et le Japon entrée 展示室入り口 © Victoria Okada
Pierre Bonnard, Femmes au jardin : Femme à la robe à pois blancs ; Femme assise au chat ; Femme à la pèlerine ; Femme à la robe quadrillée, 1890-1891, Détrempe à la colle sur toile, panneaux décoratifs, 160,5 x 48 cm (chaque panneau), Paris, musée d’Orsay, Photo © RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski
Pierre Bonnard, Les Grands Boulevards, Vers 1895, Encre de Chine avec rehauts de gouache, 32,3 x 49,2 cm. Le Cannet, musée Bonnard © Musée Bonnard/Jean-Michel Drouet
Pierre Bonnard, Terrasse dans le Midi, vers 1925, Huile sur toile, 68 x 73 cm, Fondation Glénat, Grenoble, Photo : akg-images / Fine Art Images / Heritage Images
中央階段 © Victoria Okada
展覧会の後は中庭でゆっくりくつろいでみては © Victoria Okada
グラネ美術館 ジャン・ダレ展入り口 © Victoria Okada
ニコラ・ミニアール《キリスト降誕》と作者不詳の聖人の彫刻 © Victoria Okada
バロック的な意匠が映える、直接壁に描かれたシンプル化された「額縁」 © Victoria Okada
グラネ美術館のダレ展。セノグラフィーも優れている。聖人ギャラリー。© Victoria Okada
聖人のギャラリー奥の階段を登ったところには《聖母昇天》画。© Victoria Okada
ノルマンディー 印象派フェスティバル https://www.normandie-impressionniste.fr
コーモン・アートセンター https://www.caumont-centredart.com/fr
グラネ美術館 https://www.museegranet-aixenprovence.fr