ベルト・モリゾ回顧展/モン・サン・ミシェル音楽祭
ベルト・モリゾ回顧展
Jeune femme en toilette de bal, 1879
Huile sur toile, 71 x 54 cm
Paris, musée d’Orsay, RF 843
Photo © RMN-Grand Palais (Musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski
印象派絵画で重要な位置を占める画家、ベルト・モリゾBerthe Morisot(1841-1895)。コローに師事し、ルノワール、モネ、ドガ、マラルメなどと深い交友を築いて当時のアヴァンギャルド芸術の最先端にいた彼女は、エドゥアール・マネの弟ウージェーヌと結婚。娘ジュリーや画家たちの日常を描いた絵からは、宗教的な母子像ではない普段の生活に見られる母性愛など、男性画家には稀なテーマを扱ったものも多い。
Le Berceau, 1872
Huile sur toile, 56 x 46.5 cm
Paris, musée d’Orsay, acquis en 1930, RF 2849
Photo © RMN-Grand Palais(Musée d'Orsay) / Michel Urtado
オルセー美術館で現在開かれているモリゾ展は、1986年の美術館オープン以来初めての大回顧展であり、1941年にオランジュリー美術館で開催された回顧展以来フランスでの本格的な展覧会でもある。本展では、今でも少なからず彼女につきまとっている「女性画家」というレッテルを払拭し、肖像画家、風景画家としての卓越した才能を前面に押し出して紹介する。展示作品の半分近くは個人蔵で、フランスでは100年以上見ることができなかったものも含まれている。年代ごと、テーマごとの展示は、モード、服飾、仕事などの観点から19世紀の女性の地位を伝えると同時に、中間的スペース(窓、草原、室内など)に重きを置く独特の画法が改めて確認できるものともなっている。多くの絵に見られる木々や草原の美しい緑と、軽やかでありながら描く対象の性格を鋭く観察した作品群は、見終わった後になんとも言えない爽やかさを残す。9月22日まで。https://www.musee-orsay.fr
モン・サン・ミシェル音楽祭
2017年にモン・サン・ミシェルとその周辺を会場に、宗教音楽musique sacréeを中心として始まった音楽祭Via Aeterna。3年目の今年は内容も期間もより一層充実し、9月末と10月初めの2週末に4日ずつ計8日間の日程で開催される。宗教音楽といっても実際の典礼に導入されているものから、聖書を題材にした音楽、聖人伝にインスパイアされた作品、元々は宗教的な色合いが濃かったが、現在ではテーマや形式のみを借りているものなどさまざま。これらの音楽を、300人の世界的音楽家が、英仏海峡に面した街の約30会場で演奏する。最後の10月6日には、モン・サン・ミシェル全体が音楽の都と化し、一日中感動の調べが響き渡る。https://www.via-aeterna.com/
◇初出=『ふらんす』2019年9月号