音楽業界での女性の活躍状況
女性作曲家作品の専門レーベル「La Boîte à Pépites」が2022年にリリースした録音第1号は、ベル・エポックの作曲家シャルロット・ソイーの作品を集めている。オーケストラ曲は、フランスで唯一のオーケストラ女性常任指揮者デボラ・ワルドマン指揮アヴィニョン・プロヴァンス国立交響楽団が演奏。
男女平等が叫ばれて久しいが、現在フランスの音楽業界で、これがどこまで進んでいるのかを調査した興味深いレポートが最近発表された。
レポートは、2月はじめに国立音楽センターの主催で行われた第2回「音楽における男女平等会議」に合わせてまとめたられたもの。同センターは、国立シャンソン・ヴァリエテ・ジャズセンターを中心に、音楽分野の諸機関を統合して文化省直結機関として2020年に誕生した。
レポートでは、舞台(音楽祭を除く)、録音(CD、ストリーミング、ビデオ他)、音楽業界職(アーティスト以外)の3つの分野で、女性がどのように参画しているかを調べた。録音は2021年、それ以外は2019年の調査結果となっている。
例として「舞台上での女性の割合」の数字を見てみよう。総合的には男性優位62%に対して女性優位17%。残りは男女混合グループなど。分野別では、ワールドミュージックと伝統音楽で女性アーティストが最も多くそれぞれ28%と25%、その後ジャズ20%、ミュージカル17%、ポップ・ロック・レゲエ14%と続く。
この統計にはクラシック音楽は入っていないが、別に面白い調査結果が出ている。2020~21年のシーズンでの、オペラとオーケストラの公演における女性の比率を職種別に調べたもので、例えば女性指揮者はオペラ、オケともに10%。これは世界平均6%よりも高い。しかしフランスで女性の常任音楽監督を置いているのはアヴィニョン国立交響楽団のみ。女性作曲家の作品の上演率は、オペラで5%、オケで24%。演出家と振り付け師はオペラでそれぞれ21%と38%、オケではともに30%となっている。
数字だけを見るとまだまだ少ないが、過去に比べて女性は確実に増えている。例えば、年間音楽賞「ヴィクトワール大賞」のジャズ部門で「年間アーティスト賞」を受賞した女性アーティストは、2000年から2009年では皆無だったが、2010年から21年では3人となっている。クラシック音楽では女性作曲家を再評価する動きが最近特に活発だ。国際的に活躍するプロの女性音楽家がグループを作り、図書館や個人宅に眠っている自筆楽譜を掘り起こして優れた曲を精力的に演奏・録音している。このように、音楽業界全般で今後の動向が注目される。
◇初出=『ふらんす』2023年4月号