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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

綱渡りのフランスの文化セクター

 9月の新年度から活気を取り戻し始めた文化業界だが、新コロナウイルスの感染が再び拡大し、10月に入って新たに中止・延期されるコンサートや演劇などが増えていた。例えば、9月28日に初日が予定されていたオペラ・コミック劇場での「町人貴族」は、出演者の一人が無症状ながらウイルス検査で陽性となり、なんと開演2時間前に上演が中止。当初4公演のキャンセルだったが、結局全公演が中止された。


全公演がキャンセルとなった「町人貴族」の舞台
© Marie Clauzad Cie Jérome Deschamps

 そんな中、マクロン大統領は10月14日のテレビインタビューで、10月17日以降当面4週間にわたって21時から翌朝6時までを外出禁止とすると発表。コンサートの通常開始時間が20時から21時、演劇やオペラは19時30分から20時というフランスで、21時からの外出禁止は活動禁止を意味する。大統領はこの処置によって多大な影響を受ける人々への支援を明言したが、すでに極限状態に追い詰められているアーティストや関係者は不安と動揺を隠せない。13日には、政府からの助成金給付の対象外となっているプライベート経営の興行業者が、連名で条件の改善を要求する嘆願書を文化大臣に提出したばかりだった。外出禁止令発表後すぐさま、多くの関係者が「18時開演」「ブランチコンサート」「おやつの時間コンサート」などを提案。これに対応するかのように、翌日から多くの劇場やホールが開演時間を早めたり、演目を週末に移動させたりする処置を取っている。この記事が出る頃にどういう状況になっているかはわからないが、都市封鎖中から延期されていた出し物の大部分がやっと上演可能となった矢先の禁止令。今後の政策が注目される。

 さて、明るいニュースを2つ。2018年9月にオープンした550席のホール、「ラ・スカラ・パリ」が10月13日、優れた音響を誇る150席の半円形階段状の多目的小ホール「ラ・ピッコラ・スカラ」を新たにオープンした。毎月13日の若い演奏家によるピアノリサイタルのほか、討論会、一人芝居などの演劇、パフォーマンスなどが組まれている。

 外出禁止時間の対象とはならない展覧会は、春から延期されていたものが次々と開催されている。そのうちオルセー美術館のビアズリー展は、フランス初の回顧展。19世紀末のイギリス芸術界を彗星のごとく駆け抜いた天才アーティストの全貌を、油彩や装丁本なども含めて紹介。2021年1月10日まで。

◇初出=『ふらんす』2020年12月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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