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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

パリ・オペラ座350年/18世紀から革命期の絵画とデッサン

パリ・オペラ座350年


「トロイヤの人々」
@ Vincent Pontet


Opéra national de Paris-Marion Barbeau, Arthus Raveau, Stéphane Bullion, Marc Moreau--Dogs Sleep--Photo-© Ann Ray

 ルイ14世治世下の1669年に公式に創立された王立音楽アカデミーを淵源に持つパリ国立オペラ劇場は、今年350年。オペラ・バスティーユ開設30年の節目とも重なっている。これを記念して上演時間5時間超を要するベルリオーズの大作『トロイヤの人々』が2月に久々にバスティーユの舞台にかかった。これは国家行事に指定されたベルリオーズ没後150年祭の一環としての上演でもあった。近代的なビルにヴィヴィットな色の現代衣装という演出は賛否両論をかもしたものの、最高の歌手による演奏は熱狂を持って迎えられた。また、フランスアルプスの近く、グルノーブルとリヨンの間に位置するベルリオーズ生誕の地コート・サン・タンドレで毎年行われているベルリオーズ音楽祭は、昨年いち早く150年祭を始めたが、今年はLe Roi Hector(エクトル王)をテーマに、8月17日から9月1日まで盛大に開催される。www.festivalberlioz.com

18世紀から革命期の絵画とデッサン

 パリ、レンヌ、ナントでは現在、啓蒙時代からフランス革命後までの絵画の変遷を一望できる。ナント美術館とレンヌ美術館は5月12日まで、それぞれÉloge de la sensibilité(感性礼賛)、Éloge du sentiment(感情礼賛)と題し、ルイ14世後の自由な気風を反映して花開いた人間性や感情表現に焦点をあてる。展示作品はすべてブルターニュ地方の美術館所蔵。同地方では各地の文化機関が緊密に連携を取り合い、共同で催しを開催する体制がますます整えられている。展覧会は、18世紀の美術カテゴリーを踏襲し、レンヌで宗教画や歴史画などのいわゆる「高貴な」作品を、ナントでは肖像画や静物画など当時は低く見られていたがその後大きな位置を占めてゆくテーマを扱っている。18世紀美術を中心とするパリ、マレ地区のコニャック・ジェイ美術館Musée Cognacq-Jay では、モンペリエのファーブル美術館所蔵の、1770 ~ 1815年の「革命世代」の画家によるデッサン80点を展示。歴史画・宗教画は健在だが、アカデミズムを踏まえつつも表現は斬新な息吹にあふれ、より個人を強調しロマン派に通じるものになっている。7月14日まで。www.museecognacqjay.paris.fr

◇初出=『ふらんす』2019年5月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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