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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

〈モリエール年〉開始!

 先月号でお知らせしたモリエール年の催しの中から、ヴェルサイユ・オペラの『ジョルジュ・ダンダン George Dandin』とボルドー・オペラの『町人貴族 Le Bourgeois Gentilhomme』を観た。

 ジョルジュ・ダンダンは、貴族の称号を望む裕福な農夫ダンダンが、富を望む貧乏貴族ド・ソタンヴィル夫妻と契約を結び、その娘アンジェリックと結婚。しかし彼女には恋人がおり、逢い引きを重ねる。夫婦は愛し合うものと考えるダンダンは妻に貞操を求めるが、彼女もド・ソタンヴィル夫妻も身分の違うダンダンを軽蔑し続ける。妻の浮気現場を義父母に伝えようとするダンダンは、逆に彼らに嘘つき呼ばわりされて落とし入れられ、最後には酒に溺れてしまうという筋。一見悲惨な話だが、貴族社会にはびこっていた偽善的な慣習を抉り出している。ミシェル・フォーの演出は、1階に農家風の家、2階のテラスには教会を思わせる建築要素をあしらって階級を視覚化し、フォーの特徴であるキッチュな要素をふんだんに取り入れて喜劇性を前面に打ち出して成功。また、リュリの音楽が全て、古楽器によるアンサンブルで演奏されたことも特筆に値する。6月半ばまでフランスとスイスで巡回公演を行う。


ミシェル・フォー(中央)演出・主演『ジョルジュ・ダンダン』
© Marcel Hartmann

 ボルドーの『町人貴族』は、すでに複数の劇場で上演されたものの再演。2020年9~10月に行われるはずだったパリ公演(オペラ・コミック劇場)は、初日の2時間前に出演者にコロナの陽性反応が出て、全公演が中止となった経緯がある。演出・主演はジェローム・デシャン。衣装は漫画チックな要素をふんだんに取り入れた色彩あふれるもので、見ているだけで楽しい。デシャンはかつて、演劇活動のかたわら、テレビなどで故意に陳腐なギャグを交えたコントで人気を得ていたことがあるが、その名残りとも言えるギャグがあちこちに散りばめられていた。こちらもリュリの音楽が忠実に演奏されているが、歌にまでギャグがあしらわれ、そちらの方に気を取られてしまうのが残念だった。


ジェローム・デシャン(右)演出・主演『町人貴族』
© Marie Clauzade

◇初出=『ふらんす』2022年3月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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