2017年4月号 ラ・フォル・ジュルネ
ラ・フォル・ジュルネ
日本でも毎年恒例となったラ・フォル・ジュルネが、2月初めには本家のフランス・ナントで大々的に開催された。テーマは日本と同じく「ダンス」。バレエ音楽から各国の民謡まで、中世から現代まで、バラエティに富んだプログラムが魅力。日本からは昨年に引き続き和太鼓集団「風雲の会」がエネルギッシュなパフォーマンスで聴衆を虜にしたほか、来日が予定されている古楽のリチェルカーレ・コンソートが複数のプログラムで登場し、古くから伝わる「ラ・フォリア」や、宮廷音楽に取り入れられた民謡などを、絶妙なアンサンブルで披露。やはり来日するメキシコ民族音楽グループ「テンベンベ」は、中央キオスクでの無料コンサートも行い、陽気に体を動かしながらの歌で聴衆も巻き込んで大いに会場を沸かせた。さらにプソフォス弦楽四重奏団(来日予定)が、今年70 歳を迎えた作曲家ジョン・アダムスの作品を演奏するなど普段あまり聴く機会のない曲も多い。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンも楽しみだ。
ファンタジオ
Fantasio © Pierre Grosbois
オペレッタ王として有名なオッフェンバック。《ホフマン物語》が彼の唯一の「真面目な」オペラだと言われることも多いが、1872年に初演された《ファンタジオ》は、当時から彼につきまとっていた喜歌劇のイメージを破ろうと、ミュッセの同名の戯曲をもとに作曲されたオペラ。だが、普仏戦争での敗北後、ドイツに対して敵対感情を持つフランスで、ドイツ出身の作曲家が、バイエルン王と和平を結ぶという内容の作品を舞台にかけて、成功するわけがない。数回の上演後すぐに忘れられ、各地に散らばっていたパート譜や抜粋譜を集めて再構築した完全版楽譜がつい数年前に出版されるまで再演されなかった。2月にオペラ・コミック劇場の修復後の再オープンこけら落とし作品として上演される予定が、工事の工期延長で、シャトレ劇場を借りての上演となった。最近急上昇中の演劇出身のトマ・ジョリーの彩り溢れる演出と、やはり急上昇中のメゾソプラノ、マリアンヌ・クラバッサの主演が大好評を博し、2月12 日の初日、聴衆はまれに見る熱狂ぶりだった。こういった隠れた名作が、日本でもどんどん上演されることを期待したい。
◇初出=『ふらんす』2017年4月号