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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

印象派150周年


「ノルマンディー印象派」祭ポスター

 新しい年に入って各美術館が発表した2023年の集客人数は、コロナ以前の結果を軒並みに上回るもので、今年はオリンピック年とあって記録をさらに塗り替えそうだ。
 さて、そんな今年の展覧会で最大の目玉は、オルセー美術館の「パリ1874年 印象派の発明」展と、ノルマンディー地方全土で6か月間に渡って繰り広げられる「ノルマンディー印象派」祭だ。官展であるサロン展を横目に、先進的な画家グループが独自に開催した展覧会が、そこに出品されていたモネの『印象・日の出』を揶揄して「印象派展」と名付けられたのが1874年4月。今年でちょうど150周年を迎える。第1回印象派展に展示した画家は31人だが、そのうち現在世界的に名前を知られているのは7人に過ぎない。オルセーの展覧会では、そんな無名の画家の作品も含め、歴史的な展覧会に出品されていた作品を厳選し、これを同じ時期に官展に展示されていた作品と対峙させる。今回初めて比較の対象となる作品もあり、印象派の独創性を浮き彫りにするだけでなく、当時の人々が受けたヴィジュアル・ショックを再体験してもらおうという意図も。さらに、ショックと並行して新旧の動きがどのように寄り添っていたかも見せる。当時の「前衛芸術」の仕組みと新しい芸術観念の誕生を謎解きするような展示となっている。


Claude Monet Marée basse aux petites dalles, 1884 © Collection Hasso Plattner


David Hockney painting, Normandy June 2023 © David Hockney ©JP Gonçalves de Lima

 「ノルマンディー印象派」祭では、印象派のオリジンから印象派にインスパイアされた21世紀の前衛アートまで、150年間の様々な動きに多様な角度からアプローチする。中でも興味深いのは、3年前にドーヴィルにオープンした多目的文化スペース「レ・フランシスケーヌ」での「浮世 ジャポニスムから現代芸術まで」と題された展覧会だ。東京の森美術館のコレクションから、日本美術がフランスにどのように受け入れられ、それに日本の現代美術がどのように呼応しているかを見せる。ル・アーヴルでは、1840年代の写真発明から90年代までにノルマンディーで撮影された写真を、当時の絵画とともに展示。港町オンフルールでは、海の画家ブーダンを扱う。さらに、ノルマンディー地方の首都ルーアンでは、フランスでも活躍し大きな影響を与えたホイッスラー展が開催される。


Gustave Le Gray Le Soleil au zénith - Océan n°22, Normandie ©Le Havre, Bibliothèque municipale


Morimura YASUMASA Un moderne Olympia, 2017-18, C-print et medium transparent 210x300 cm © Mori Art Museum, Tokyo

ノルマンディー印象派祭 https://www.normandie-impressionniste.fr/fr

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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