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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

フランスの文化再興への試み

 今年に入って文化・レジャー施設の閉鎖が1月末まで延長されたことを受けて、文化業界に携る人々は2月末か3月ごろまでは再開されないだろうと予想しており、いまだに先行きの見えない不安定な状態が続いている。それに追い打ちをかけるように、1月14日の政府発表で、これまで20時からだった夜の外出禁止令(年頭から東部を中心に一部地域で18時に繰り上げられていた)が、全国的に18時からとなることが発表された。

 一方、年頭にフランスの文化メディアがこぞって取り上げたのが、スペインの例だ。スペインでは外出禁止令の中でもコンサートホールも劇場も映画館も完全に閉鎖されず、公演時間を大幅に変更し、ソーシャル・ディスタンスを保ち、厳格な衛生基準を遵守して催しが行われてきた。そのような劇場での活動とウィルスの伝播状況を知るため行われた調査の結果が年明け早々に発表され、クラスターが全く発生していないことが明らかにされたのだ。科学的に根拠を示した調査結果が出たことで、何らかの形で文化活動が再開できるかもしれないと希望を取り戻す関係者も少なからずいる。

 フランスの文化関係者への援助体制は世界的にも手厚い。フリーランスで働くアーティストや関係者には、毎月申請すれば補助金が下りるし、雇用システム下で働く人には部分失業制度が適用され、仕事がストップしても政府から通常給与額に比例したパーセンテージ(最高約70パーセント)の「給与」が支給される仕組みになっている。それでも長引く都市閉鎖と外出禁止令で文化セクターは疲弊し、中止や無期延期となるコンサートや公演が後を絶たない。これをどう打開するかが挑戦の鍵となっている。

 その「挑戦」の顕著な例がデジタル化だ。単にコンテンツを配信するだけではなく、新しい試みも現れている。昨年グラン・パレで行われたポンペイ展は、ヴェズヴィオ山の仮想噴火など、バーチャル要素をふんだんに取り入れて大成功を博したが、グラン・パレはこれを発展させて「グラン・パレ・イマージョン」と銘打った新機関を発足。デジタル展覧会にさらに力を入れる。同じグラン・パレで3度も開催が延期されている写真展「白と黒で」は、一部作品をパネル化してメトロ13駅に展示。展示内容を事前に知ってもらうことで再開を準備している。


メトロのリュクサンブール駅での写真展「白と黒で」
© Nicolas Krief - RMN-GP

◇初出=『ふらんす』2021年3月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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