2018年3月号 ジュネーヴ・オペラ改装工事/ミンコフスキ指揮《ペレアスとメリザンド》
ジュネーヴ・オペラ改装工事
オペラ・デ・ナシオン
© Kahle Acoustics
スイスのジュネーヴ・オペラは、2016年から約50年ぶりの大改装工事が続行中で、その間、木造の仮建築がナシオン広場に建てられ「オペラ・デ・ナシオンOpéra des Nations」として公演が続けられている。この建物は、パリのコメディ・フランセーズが2012年に改装した折、隣接したパレ・ロワイヤル広場に設けられていた仮劇場を再利用したもので、もともとの 750 席を 1064 席にまで増やし、オーケストラピットと楽屋を増設してオペラ上演に適応させた。工事費捻出策として、観客シートの買い取りシステムを導入し成功。寄付者の名前を彫り込んだプレートがシートに設置されている。今年の改装工事終了の前に是非オペラ鑑賞をと、ヨハン・シュトラウス 2 世のオペレッタ《ジプシー男爵》の仏語版を観に出かけた。ある歌手が病気のため出演できなくなり独語で歌える歌手を急遽起用。台詞部分は仏語の俳優を立て、一役を二人で分け合うという異例の解決策を導入した。歌手陣の実力には少々ばらつきがあったが、仏語圏では現在あまり上演されない作品でもあり、年末年始に家族で楽しめる公演として人気も上々。仮劇場の音響は、演劇には理想的だがオペラには今ひとつ響きが足りないように感じた。
www.geneveopera.ch
ミンコフスキ指揮《ペレアスとメリザンド》
《ペレアスとメリザンド》
© Julien Benhamou
古楽出身でありながら、20 世紀初めにまで精力的にレパートリーを広げている指揮者マルク・ミンコフスキ。9 月よりオーケストラ・アンサンブル金沢の芸術監督になることが、年頭に公式発表された。その就任公演として、没後 100年となるドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》が今夏に金沢と東京で予定されているが、同じ演出によるボルドー公演を観た。ほとんど何もない舞台にオーケストラを置き、それを取り囲むスペースでドラマが繰り広げられる。ビデオを大幅に活用して登場人物の内面を描き出す演出により、舞台変換が皆無に等しくなり、ドビュッシーが望んだ滞ることのない連続したドラマ進行が可能になった。夏に来日予定のメリザンド役のキアラ・スケラートとゴロー役のアレクサンドル・デュアメルも好調。日本公演が今から楽しみだ。
www.opera-bordeaux.com
◇初出=『ふらんす』2018年3月号