2018年5月号 テロリズムの犠牲者に捧げるコンサート/オペラ《金閣寺》フランス初演/大名展
テロリズムの犠牲者に捧げるコンサート
パリのコンサートホール「バタクラン」や南仏ニースなど、一連のテロはフランス人の記憶に強烈に焼きついている。世界中で続くテロ災害の被害者を支援し、同時にテロ行為防止のための活動を展開するアソシエーション「フランス・テロ被害者協会」と、ピアニストのファニー・アズロが、3 月17、18 日にパリで被害者にオマージュを捧げるコンサートを開催した。クラシックとジャズが中心のプログラムでは、世界的なアコーデオン奏者リシャール・ガリアノが、アズロもメンバーのスピリタンゴ・カルテットと競演。収益金は、同協会が進める、ニースのテロ被害のトラウマに悩む4 ~ 12歳の子どもたちをさまざまなアプローチの精神療法で支援する「ミモザプロジェクト」に活用される。 www.afvt.org
オペラ《金閣寺》フランス初演
©KlaraBeck
©KlaraBeck
ドイツに程近いストラスブールを本拠にコルマールとミュルーズの3 都市で展開するラン(ライン)国立オペラOpéranational du Rhin では、3 月中旬から4月中旬まで日本をテーマに多彩な催しが開催された。そのメインは、三島由紀夫の小説を題材にした黛敏郎のオペラ《金閣寺Le Pavillon dʼor》のフランス初演だ。宮本亜門の戧造性あふれる演出による東京二期会との共同制作で、ドイツ語上演。フランスでは無名だった黛という作曲家が、驚きと尊敬をもって迎えられた。www.operanationaldurhin.eu
大名展
©Stéphane Ruchaud
アジア美術専門のギメ美術館と、現代美術のパレ・ド・トーキョーがコラボレーションした初めての展覧会「大名」展が、5 月13 日まで開催されている。会場は上記2 館と、ギメ美術館の別館として本館から数十メートルの場所に昨年新装オープンしたエイデルバック館。フランス各地の公私コレクションから、33体の甲冑と、兜(蟹のはさみや孔雀の羽の変わり兜もある)、刀、陣羽織などを集めて一挙に公開。仏国内のコレクションによるこれほど大規模な展覧会は初めてだという。パレ・ド・トーキョーでは、英国の現代アーティスト、ジョージ・ヘンリー・ロングリー氏が、鎧をモチーフとして扱い映像も交えたインスタレーションを展示している。www.guimet.fr
◇初出=『ふらんす』2018年5月号