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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

21世紀オペラのクリエーション

 新作の初演はこの項でも何度か取り上げたが、パリでは11月と12月に21世紀のオペラが上演され、大きな話題を呼んだ。一つは、11月にオペラ・コミック劇場で演出付きで上演されたパスカル・デュサパン作曲の『マクベス・アンダーワールド』。2019年9月にベルギー・ブリュッセルのモネ劇場で世界初演され、2020年春にオペラ・コミック劇場で上演されるはずだったがコロナ禍による劇場閉鎖で中止。今回がフランス初演となった。演出は今仏演劇界で大人気のトマ・ジョリー。彼は来年のオリンピックパリ大会の開幕式の演出を担当する。特徴ある照明を効果的に駆使した舞台では、「アンダーワールド」と言う題の示す通り、マクベス夫妻の暗い地下的な部分をえぐり出す物語が進んでゆく。音楽は、頭が痛くなるほど極限まで緊張が続いた後に不気味な静寂が来るのが特徴で、劇作という観点で映画にしてもおかしくないような作品に仕上がっている。

© Dimitri Scapolan

 もう一つは、12月はじめにラジオフランスのオーディトリアムで、コンサート形式で上演されたリゲティの『ル・グラン・マカーブル』。初演は1978年だが、上演ごとに改訂され、今回上演されたのは1997年の最終版のフランス語版。このバージョンでの世界初演(フランス初演は1981年ガルニエ宮)なので21世紀バージョンといっていいだろう。死をテーマにした作品だが、喜劇・ファルス的な要素や言葉遊びがふんだんに取り入れられている。音楽は、ベートーヴェン、ロッシーニ、ビザンチン聖歌、サンバ、ラグタイムなど、過去の音楽や世界各地の音楽をふんだんに引用。その一方で、クラクションやサイレン、目覚まし時計、電鈴、鞭、サンドペーパー、ホイッスルなど多くの実用品が打楽器として使用され、混沌とした様子が伝わってくる。演出はないが、歌手たちは人物に相当したさまざまな動きを取り入れ、十分に楽しめた。

© Stefan Brion

 ヨーロッパではオペラやコンサートを問わず、以前から各地で活発に新作が披露されてきた。フランスの場合、助成金交付の条件として新作発表が組み込まれていることが多いのもその理由だが、どのようにすれば1回きりの演奏で終わらないようにできるのかが関係者の悩みの種でもある。

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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