ラ・ヴェゼール音楽祭/マントン音楽祭/ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭
ラ・ヴェゼール音楽祭
今年で38回となるラ・ヴェゼール La Vézère 音楽祭は、仏南西部のコレーズ県各地で7 ~ 8月に断続的に開催される。13世紀の聖ルイ王の時代に遡(さかのぼ)るサイヤン城Château du Saillant では、期間中の一週末に2つのオペラを上演する。城の穀物庫を改装したコンサートホールの、床を高くしただけの30平米に満たない舞台で、イギリスの室内オペラ団Diva Opera がピアノ版で演奏する。客席最前列との距離は1メートル。歌手の表情や動きがすぐそばで見られる。もう一つの特徴は、各演目の時代設定に合わせて毎回特別に製作される見事な衣装とかつらだ。今年はモーツァルトの《後宮からの誘拐》とヨハン・シュトラウス二世の《こうもり》。《後宮》ではオスマントルコ風の、《こうもり》では19世紀後半の華麗な衣装が目を楽しませてくれた。
DIVA OPERA©Créafix Studio
DIVA OPERA©Créafix Studio
マントン音楽祭
フランスで最も古い音楽祭の一つ、マントンMenton 音楽祭は、毎年7月後半から8月初旬に開催。イタリア国境の、コートダジュールの景勝地マントンへ行くには、ニースから海辺を通る鈍行電車に乗る。地中海が見晴らせるフランスで最も美しい路線の一つだ。音楽祭では、世界的なヴァイオリン教授ザハール・ブロン氏がスイスで主催するいわゆる「神童」のための音楽学校の、「マントン夏季集中コース」を開いている。今年はブロン氏に学んだ庄司紗矢香さんが講師として登場。彼女が担当した10歳から15歳の6人の生徒によるガラコンサートがジャン・コクトー美術館で行われた。コンサートの最後には庄司さんも数曲演奏。終了後はディプロマ授与式に続いて生徒たちが講師とともに思い思いに写真を撮り合っていた。
マントン音楽祭
ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭
世界最大のピアノ音楽祭として有名な「ラ・ロックLa Roque」。毎年10か所ほどの会場でジャズやチェンバロのコンサートも開かれている。今年は、プロヴァンス地方リュベロン国立自然公園内に位置する、ゴルドGordes のテラス屋外劇場でのコンサートを聞いた。会場はその名の通り、広大な平野が見渡せる高台にあり、夕暮れ時は絶景。
ゴルドのテラス屋外劇場
ゴルドのテラス屋外劇場からの眺め
各音楽祭の詳細はhttp://vivace-cantabile.com。
◇初出=『ふらんす』2018年10月号