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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

〈イマジナル〉フェスティバル


イマジナル・フェスティヴァルのヴィジュアル 同フェスティヴァルの公式サイトより。
© Imaginales.fr

 エピナル画で有名なフランス東部の街エピナル。昔から各地で行われていた、宗教画を中心にした版画制作は、フランス革命を境に東部に移行し、19世紀始めからエピナルを拠点に栄えた。折しも皇帝となったナポレオンやその兵士たちは、彼らが作り上げた第一帝政を宣揚するためにイメージを大いに活用。エピナル版画はこれに乗じて大発展を遂げた。しかしエピナル画という総称は、時が経つにつれ「善良でナイーブな大衆画」の意味で仏語表現に定着。現在でも安価な三流版画を指すことが多い。

 そんな固定観念を払拭しようと、市はグラン・エスト地方圏と共同で「ポピュラー画の首都」を打ち出し、版画にとどまらず、BD(バンドデシネ)、漫画、ビデオゲームからコンピュータグラフィック、さらにはAI画などの絵や動画を一括した新しい「エピナル画」のイメージを積極的に発信している。そんな中、2002年に〈イマジナル〉フェスティバルが誕生した。ファンタジーやSFを中心に、毎年5月末に4日間にわたって開催される。2020年以来3年ぶりの対面形式での開催となった今年は、「都市の未来」がテーマ。ヨーロッパ全土やアメリカから200人以上のイラストレーターや作家、80人以上の講師が招かれ、ファンとのふれあいが持たれたほか、多くの賞も発表。研究者によるシンポジウムも開かれた。歴史セクションでは普仏戦争での兵士の野営や中世の村落での生活を再現する人々も。もちろんコスプレも盛んで、映画や漫画・アニメにとどまらず、SF小説などの登場人物に変装した人々の姿も多く見られた。また今年からは、毎年9月に行われていた「イメージ祭」がイマジナルに組み込まれ、毎夜、建物へのマッピングが人々の目を楽しませた。
www.imaginales.fr/

 


国際音楽批評家協会2022年アントワーヌ・リヴィオ大賞授賞式より。
© Victoria Okada

 音楽の分野では、パリに拠点を置く国際音楽批評家協会が「レ・フリヴォリテ・パリジエンヌ」アンサンブルに与えた2022年度アントワーヌ・リヴィオ大賞の授賞式が、このほどパリ市内で行われた。これまで二流とされていたオペレッタ、キャバレー、ミュージックホールなどの音楽を積極的に取り上げ、レパートリーとして定着させた功績を評価されたもの。同アンサンブルは来シーズンからシャンパーニュ地方ランスオペラの音楽監督となるが、団体がこのような地位に就くのはフランスで初めて。
https://lesfrivolitesparisiennes.com/

◇初出=『ふらんす』2023年8月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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