元教会、今はカルチャースポット! フランス各地の再生物語
JRのインスタレーション「Adventice」 © Office du tourisme de Montpellier
さまざまな理由で本来の役割を失った教会や修道院を、文化施設として再生し、地域の活性化につなげる事例は、フランスでは数多く存在する。今回は、そのような場所をいくつか紹介しよう。
まずは、これまでにも何度か取り上げたドーヴィルの「レ・フランシスケーヌ Les Franciscaines」。かつてフランシスコ会女子修道院だったことからこの名が付けられている。回廊を覆う透明な屋根から吊り下げられたオブジェは詩的で、館内は図書館、美術館、カフェが一体となって共存している。図書館の壁には絵画が惜しみなく展示され、閲覧室はそのまま憩いの空間となっており、どの空間も遊び心にあふれている。専用の展覧会スペースでは、海洋世界をテーマにしたピエールとジルの個展を1月4日まで開催中で、特別に制作された新作がなんと4点も展示されている。かつての教会部分は、音響に優れたコンサートホールとして活用されている。
次に、食の都リヨンに昨年オープンした「シャペル・ド・ラ・トリニテ Chapelle de la Trinité」だ。その名の通り、もとは礼拝堂で、17世紀バロック建築をそのまま保存・活用したコンサートホール。プログラムに特徴があり、かつてここで響いていたであろうバロック音楽に加え、エレクトロやヒップホップなども同じ割合で組み込まれている。
南東部、ヴァランス近郊のロマン・シュル・イゼールにある「靴の博物館」は、17世紀には大規模な女子修道院だった。この地域は伝統的に高級靴産業が盛んで、パリのオートクチュールブランドの靴を製造する工房も多く存在していた。靴の制作工程や各国の靴の歴史を詳しく展示している。
最後に、南仏モンペリエに今年5月末オープンした「カレ・サンタンヌCarré Sainte-Anne」。19世紀半ばにネオゴシック様式で建てられた教会だが、設計上の問題から長年閉鎖されていた。6月末の再オープン記念イベントでは、巨大な騙し絵で知られるストリートアーティストJRが、人々の手形を葉に見立てた大木のインスタレーション“Adventice”を設置。館内にはコピー機が置かれ、来館者が手形をコピーすると、それを木の葉として展示してもらえる。
レ・フランシスケーヌ https://lesfranciscaines.fr/fr
シャペル・ド・ラ・トリニテ https://trinitelyon.com/
靴の博物館 https://www.museedelachaussure.fr/