印象派ゆかりの地、ノルマンディーでの展覧会
ルーアン美術館では、カミーユ・モロー゠ネラトン(オルセー美術館に彼女の絵画コレクションがある)に馴染みの深いホイッスラー展が開催中。正式名称は「ホイッスラー バタフライ効果」。署名と同時に浮世絵のそれに似た蝶を描いたホイッスラーの日本との関連や、彼のスタイルを踏襲した同時代の画家たちの作品を同時に紹介する。ジャポニズムの他に、ダンディズムや文芸サロン、芸術家をめぐるスキャンダルや「神話」など、一人の画家から連想される様々なテーマを扱っている。同展では写真も重要な位置を占めているが、海の風景写真は、実はル・アーヴルの港(モネが「印象・日の出」を描いた場所)とその周辺で撮影されたものによって技術革新がもたらされたのだった。それを紹介する大規模な展覧会「ノルマンディーの写真」展が、ル・アーヴルのアンドレ・マルロー現代美術館で開催されている。当時の写真家が波と光の撮影に苦心したことがよくわかる。いずれも9月22日まで。
「Passion Japon 根付から漫画まで」展での展示から © Victoria Okada
壁一面の塗り絵とマスコットの「シバ」© Victoria Okada
静御前の人形 20世紀初め Inv. OA.1961.1.947, don Legendre, 1961; Musée des Beaux-Arts de Rouen © Yoann Groslambert / Réunion des Musées Métropolitains Rouen Normandie
印象派の画家たちが日本美術から多大な影響を受け、西洋絵画を革新していったのは周知の事実だが、一方でジャポニズムは現代的な意味での流行のはしりだった。西洋の趣味に合わせた商業ベースのグッズなどが生産され、後の大量生産に繋がる生産体制がシステム化されたのだ。それをコンパクトに紹介したのが、ルーアンの陶磁器博物館で開催されている「日本の情熱」展だ。副題は「根付から漫画まで」。3つの展示室は、19世紀後半、20世紀初めから1990年、1970年から現代という時代区分で、それぞれの時代を代表する日本の品のコレクションを紹介する。最初の2部屋では、ルーアンのアドリーヌ夫妻や、カミーユ・モロー゠ネラトンが蒐集していた陶磁器、漆器、版画、厨子(仏壇)などが並ぶ。最後の部屋では、市民から募った日本の品のコレクションを展示。漫画・アニメと関連グッズが中心で、フィギュアなどのグッズコレクションを伝統的な「作品蒐集」に連なる行為と捉えているのだ。柴犬のマスコットをあしらった子供用の説明も可愛い。7月初めには「日本 パッションとポップカルチャー」と題して版画、習字、漫画などのアトリエや、チャンバラ大会が2日間に渡って開催され、大盛況を博した。
扇:ホイッスラー展には多くの扇が展示されている。写真はアンナ・ローデンバッハの扇。詩人マラルメ、画家ピュヴィス・ド・シャヴァンヌとホイッスラーの共作 © Victoria Okada
ホイッスラーのパレット:ホイッスラーの画材箱とパレット © Victoria Okada
展覧会では、当時急速に発達した写真にも重きを置いている © Victoria Okada
『ノルマンディを撮る』展より:当時の絵画と写真にはテーマや構図に多くの共通性がある © Victoria Okada
ルーアン大聖堂:モネのごとく、写真家もルーアン大聖堂を多く撮影した © Victoria Okada
写真技術は海を撮ることでも発達した:ル・アーヴルで撮影された海の写真は技術革新にも大きく貢献した © Victoria Okada