木ノ下歌舞伎の勧進帳/《京都の宝-琳派300年の創造》展/La Cité du vin
木ノ下歌舞伎の勧進帳
ジャポニズム2018のプログラムの一環として11月はじめ、歌舞伎の傑作を現代風に演出する木ノ下歌舞伎が、現代美術の殿堂ポンピドゥセンターで『勧進帳』を上演した。タイトルにはKinoshita Kabuki-Kanjincho とあり、「Kabuki」という言葉から伝統的な衣装と舞台装置の演目を想定して来たと思われる観客もかなりいたものの、すぐにコンテンポラリー演劇と理解して興味深く見入っていた。配られたプログラムには「杉原邦生の演出は、弁慶・義経・富樫のドラマからすべての人間の〈境界をめぐる物語〉にまで押し広げた」とある。境界というテーマは、懸案としてフランスを含めヨーロッパ各国に重くのしかかっているだけに、日本の伝統芸能が時事テーマとして見る人の心に迫り、大喝采で迎えられた。
《京都の宝-琳派300年の創造》展
パリ市立チェルヌスキ美術館では、琳派の300年の系譜を紹介する展覧会(2018年8月号特集参照)が大好評を博している(1月27日まで)。目玉はヨーロッパ初公開の俵屋宗達筆の国宝《風神雷神図屛風》。他にも、宗達、光琳をはじめとする琳派の傑作が揃う。アール・デコにも通じる斬新なデザイン性を見せるもの、大胆な構図や色使い、息をのむほど丁寧に描きこまれた細部など、日本美術の極致とも言える作品群を前に、ため息をつく人や思いおもいにコメントしながら鑑賞する人などで溢れている。
www.cernuschi.paris.fr/
La Cité du vin
2016年5月にボルドーのガロンヌ川沿いにオープンしたワインとワイン文化の博物館、La Cité du vin(ラ・シテ・デュ・ヴァン)。常設展はテクノロジーを駆使して動画・音声を組み合わせたインタラクティブで教育的な解説が魅力だ。世界のワイン産地の紹介から始まって、ワインの歴史・文化背景、ワインをめぐる雑学的エピソード、現代生活とワインなど、多様なテーマでワインを捉えることができる。それぞれの解説は最大2分ほどでわかりやすくコンパクトにまとめられており、大変興味深い(日本語版もある)。7階のガストロノミレストランやボルドーの街が一望できる8階のパノラマテラス(試飲も可能)もおすすめ。
www.laciteduvin.com/fr
◇初出=『ふらんす』2019年1月号