フェンシングとオリンピック・オペラ
実体験型ゲーム 画面に出てくる物体を斬る © Victoria Okada
アルザス地方の街セレスタは、ルネサンス時代に人文主義の拠点だった。その時代の貴重な書籍を当時のまま保管している「人文主義図書館(Bibliothèque Humaniste)」では、フェンシングをテーマにした「En garde ! (試合または戦いの前に相手に「構え!」と注意を喚起する掛け声)」展が11月10日まで開催中。同図書館所蔵の16世紀のフェンシングの指南書を起点に、今日までこのスポーツがどのように受け入れられてきたかを、4つのテーマに分けて紹介する。最初は技の伝達。ストラスブールで活躍していたスイス人剣士、ヨアヒム・マイアーが1570年に全5巻の「教科書」を出版。初期フェンシングの様子を伝える貴重な資料だ。次のテーマは文学や映画などでよく扱われている「決闘」。続くコーナーでは、剣士の服装(とくに羽のついた帽子)や、演劇やオペラなどの舞台で剣のシーンがどのように表現されたかを、ストラスブールオペラの衣装館から借りた衣装などを通して見せる。最後はフェンシングとポップカルチャーで、現在のバンド・デシネやビデオゲームの例を紹介。特別展会場のそばの家族スペース(無料)では、実際に木製の剣で画面に出てくるさまざまな物を斬るという、実体験型ゲームが。これがなかなか難しく、大人も子供も夢中になって遊べること請け合いだ。同コーナーでは17世紀スペインを舞台にしたオリジナルビデオゲームも楽しめる。
人文主義図書館の旧入り口 © Victoria Okada
En garde ! 展入り口 © Victoria Okada
人文主義図書館の歴史的書物を保管する書架 © Victoria Okada
Détail d'une planche gravée du Joachim Meyer, Gründtliche Beschreibung der freyen Ritterlichen und Adelichen kunst des Fechtens, Strasbourg, 1570, Sélestat, Bibilthèque Humaniste, K 161 © Ville de Sélestat
Erro', Les Quatre Mousquetaires, 1988, Strasbourg, Kraemer Gallery © S. Breitling
ストラスブールのオペラ劇場から借り入れた衣装 後ろのポスターにも注目 © Victoria Okada
ストラスブールのオペラ劇場から借り入れた衣装の詳細 © Victoria Okada
会場には各時代の剣もいくつか展示されている © Victoria Okada
パリ、シャンゼリゼ劇場の今季最後のオペラは、文化オリンピアードの一環として上演されたヴィヴァルディの『オリンピアーデ』。古代ギリシャのオリンピック競技を背景に、優勝の報酬が王女との結婚という恋愛と政治的策略を混合した筋書き。王女に恋をしているが体力に自信のない主人公は、過去に何度も優勝している親友に身代わり出場を依頼する。しかしその親友も王女に想いを寄せていた……。舞台では現代の体操選手に扮した登場人物が競技の準備をしたり、主役の一人のカウンターテナーが実際にブレイクダンスのポーランドチャンピオンで、ダンサーたちとブレイクしたりと、全く飽きない。親友が見事優勝すると、司会者がテレビショーのように優勝をアナウンスしたかと思えば、王や王女は何世紀も前の衣装をまとって出てきたりと、オリンピックの普遍性を示すような舞台が楽しい。精鋭の歌手陣の歌も見事だった。
© Victoria Okada