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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

ポスト・コロナとエネルギー危機

 コロナ禍がひと段落し(フランス政府のラジオ・テレビ広報では、コロナはインフルエンザなどとともに「冬のウィルス」として扱われている)、文化業界もかつての活気を取り戻しつつある。

 ポンピドゥーセンター内の現代美術館は昨年、2019年の140万人を上回る150万人の入館者を記録。リニューアルした同センターのウェブサイトにはのべ540万アクセスがあり、前年比40パーセント増。またプチパレの入館者は100万人以上で、2005年に再オープンして以来3番目の入館者数を記録した。同館は4月からサラ・ベルナール展が、11月から20世紀初めのパリを俯瞰する展覧会が開催される予定で、さらに入館者数が伸びそうだ。

 そんな中、独自のプログラミングで盛況なのが「ラ・スカラ・プロヴァンス」だ。昨年夏のアヴィニョン演劇祭に合わせて南仏アヴィニョン市にオープンした新しいホールで、5年前にパリに開設された「ラ・スカラ・パリ」の姉妹館。演劇、音楽、サーカス、ビジュアルアートなどのアーティストが立案したプロジェクトを本番まで具体的に実現できる完全フォロー体制を整えている他、プロジェクトに集中できるよう、最新設備搭載の録音スタジオや宿泊施設も完備。その一環としての新しいCDレーベルScala Musicも好調な出だしを見せ、すでに8タイトルがリリースされている。https://lascala-provence.fr/


昨年夏にオープンしたラ・スカラ・プロヴァンスの外観
©La Scala Provence


ラ・スカラ・プロヴァンスの内部
©La Scala Provence

 IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)では、待ち望まれていた「プロジェクションスペース」の改装が終了し、8年間ぶりにオープンした。音響もスペースも自由自在に変更できることが特徴。演奏中に音響を全く異なったものにすることも可能なのだ。1月12日から17日まで広く一般に無料開放され、多くの人が訪れた。


改装されたIRCAMのプロジェクションスペース
©Quentin Chevrier

 パリ・オペラ座は海外県ギアナで若い歌手やダンサーを育てる企画を立ち上げ、支部を設置して本格的に力を入れ始めた。

 新しいプロジェクトの一方で、ウクライナでの戦争によるエネルギー危機のため、多くの劇場が上演回数削減を余儀なくされ、最悪では閉鎖の危機に直面している。政府から多額の助成金を得ているパリ・オペラ座も、春の欧州ツアーのうち、採算が取れないという理由で一部公演を中止すると発表。政治サイドでの早急な対応が望まれている。https://www.ircam.fr/

◇初出=『ふらんす』2023年3月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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