2018年4月号 コンピエーニュ劇場の《リナルド》/ヨアキム・ホースレー
コンピエーニュ劇場の《リナルド》
コンピエーニュ劇場での《リナルド》
© Pascal Perennec
パリとリールの間に位置するコンピエーニュは、ナポレオン3世の時代に栄えた街。明治元年の前年に当たる1867 年に宮廷を楽しませるために建設が始まった「帝国劇場」は、その後工事が進まないまま放棄され、なんと1991 年(!)に開場したいわく付きの劇場だ。このコンピエーニュ劇場と、国立のブザンソン、ダンケルク、カンペールの劇場が共同で展開するco[opéra]tive という機構が、数年前に生まれた。協同組合を意味するcoopérative にopéra を掛けて、オペラが専門ではない劇場を、巨大なオペラ制作共同体として機能させようという試みだ。例えば、大道具のアトリエを持つ劇場が、共同制作する各作品の大道具を担当、衣装は別の劇場が一手に引き受けるという具合に、一劇場だけでこなすのが困難なさまざまな役割をお互いに分担することで、負担や経費を節約しつつ質の高い上演を実現しようというもの。
このシステムによる制作の3 作目で、1 月から8 月まで各地で上演されているヘンデルの《リナルド》を観た。リール美術学校で彫刻を学んだクレール・ダンコワーヌの演出は、機械仕掛けの大きな馬、魚、戦車、船、象や、金属、紙、木を駆使して作られた鳥、ドラゴン、野獣などの動物、仮面、人形、兵士などなどが次々と現れるおとぎの世界。幻想的な照明も大きな位置を占めている。一方音楽は、唸るほど見事な歌手たちと、稀なまでに高いレベルに到達した古楽アンサンブル「キャラヴァンセライユ」を、チェンバロ奏者のベルトラン・キュイエが弾き振りで指揮。あらゆる面で大成功の舞台だった。
http://www.theatre-imperial.com
http://www.lacoopera.com/
ヨアキム・ホースレー
ベートーヴェン、ショパン、マーラーなどクラシックの名曲を、パーカッションやヴァイオリンを交えてルンバ風にアレンジしてしまうピアニストのヨアキム・ホースレーが、2 月なかば、伝統的なミュージックホール、フォリー・ベルジェールで初のパリコンサートを行なった。パーカッションの熱いリズムに時折ダンサーも交えたエネルギー溢れる音楽に、会場は総立ちとなった。
https://www.joachimhorsley.com
◇初出=『ふらんす』2018年4月号