白水社のwebマガジン

MENU

「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

文化オリンピアード




器楽アンサンブルLes Apaches !による「ストリートアート」と題されたオルセー美術館でのコンサート
© Droits réservés

 7・8月のオリンピック・パラリンピック競技パリ大会に向け、「文化オリンピアード Olympiades culturelles」が3月、正式に始動した。オリンピックに文化を導入しようというもので、音楽・ダンス・演劇・写真・造形美術などを総合的に取り込んだ祭典だ。公認イベントとなるには、特別に設置された委員会の承認が必要という極めて公式なもの。すでに昨年から各地で催しが行われているが、メインとなるのは6月から8月にかけて開催される数百のイベントだ。
 普段スポーツとはあまり関係ない文化分野にスポーツを取り入れてイベントに仕立てるべく、皆さまざまに趣向を凝らしている。中でも、4月12日にエッフェル塔下の芝生スペース「シャン・ド・マルス」で予定されているディクテ(仏文書き取り)大会は、純粋な文化イベントをコンペティションという範疇に入れてしまおうというケース。気軽に参加できるため人気がある伝統的な催しだが、オリンピック関連行事にすることでより多くの人々の注目を集めている。4月にパリで開催のヒップホップバトル、5月下旬から各地で行われる即興演劇コンペや、DJコンテスト、3×3バスケットトーナメント、ブレイキング国際バトルなどを同一会場で一挙に開催する「プレイイン・パリ」(5月下旬)なども、コンペティション形式の行事だ。ちなみにブレイキングは、スケートボード、サーフィン、スポーツクライミングとともに今回オリンピックに導入された新しいスポーツ。これらのストリート系スポーツは、Olympiades culturellesでもストリートアートとともに繰り広げられている。例えば器楽アンサンブル「レザパシュ!」は、オルセー美術館で、落書きアートなどにインスパイアされた新作の音楽に合わせて、通常は建物の屋根の上を走り回るフリーランナーが館内を軽快に駆け巡るというコンサートを2月に開催。また、音楽家と聴衆がともにサイクリングし、たどり着いた地点でコンサートを楽しむという仏オーケストラ協会による企画もすでに好評を博している。パリ・オペラ座、ヴェルサイユ宮殿、仏国立美術館連合などはプレスリリースで独自の公式プログラムを発表。その一つとして、7月14日16時30分からバスティーユ広場で一般参加による巨大バレエクラスが開かれる。


フランス全土・国外から、あらゆる世代の3000人以上が集ってエッフェル塔の下で行われた「グラン・ディクテ」では、マルク・レヴィなど人気作家3人が書き下ろしたテキストを書き取った。
© France Info のキャプチャ

タグ

バックナンバー

著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

フランス関連情報

雑誌「ふらんす」最新号

ふらんす 2024年5月号

ふらんす 2024年5月号

詳しくはこちら 定期購読のご案内

ランキング

閉じる