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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

いま、フランス国立図書館がおもしろい!


いくつもの丸天井が重なり合う国立図書館ラブルース閲覧室は、国立美術史研究所の資料館となった
©︎ Victoria Okada

 蔵書数・内容とも世界有数の陣容を誇るフランス国立図書館。BnFの略称で親しまれている。14世紀半ばに設置された王室図書室を起源とし、現在はフランソワ・ミッテラン館(通称トルビアック)とリシュリュー館を中心にパリに4箇所の閲覧施設を擁するほか、パリ郊外に保存施設、アヴィニョンにジャン=ヴィラール館がある。そのうち、リシュリュー館が、12年間の改修改装工事を経て、9月17、18日の「文化遺産の日」より一般公開されている。両日夜には演出つきの読書会なども開催。特筆すべきは、これまで研究者だけに公開されていた卵型の閲覧室「サル・オヴァル」が誰でも無料で自由に利用できるようになったことだ。約6000冊の美術関係書と約9000冊のBD・漫画が閲覧できる。同じ建物内のギャラリー・マザランは博物館となり、国宝級の貴重な所蔵品が常設展示されている。


国立図書館の壮大なサル・オヴァルSalle Ovaleは誰でも無料で利用できる
©︎ Victoria Okada

 さて、その国立図書館で1月15日までモリエール展が開催。会場は2箇所で、リシュリュー館ギャラリー・マンサール(モリエールの生前に完成)の特別展示室と、ガルニエ宮(パリ・オペラ座)内のオペラ図書館。今年生誕400年、来年没後350年を迎えるモリエールの人生にはまだまだ謎の部分が多い上、彼自身が伝説を作り上げてきた部分もある。そこに焦点をあて、彼にまつわる真偽をテーマに、モリエールの時計や衣装、世界唯一、彼の生前に制作された肖像版画、初めて「モリエール」という署名を使った書類などの歴史的資料の他、歴代有名俳優による上演・上映資料などを通して、その人生に迫る。オペラ館では「モリエールと音楽」と題し、音楽家リュリとシャルパンティエとの公式なコラボレーションを中心に、彼の死後、モリエール作品が舞台芸術でどのようにとらえられてきたかを探る。


「モリエールと音楽」展の展示風景
©︎ Victoria Okada


「モリエールと音楽」展で解説をする学術責任者のL・デコベール氏
©︎ Victoria Okada

 今年はフランス文学のもう一人の巨人、プルーストの没後100年(昨年は生誕150年だった)にあたる。トルビアックでは初公開の手稿などを中心に、350の展示品を通して『失われた時を求めて』の執筆・出版過程を追う展覧会が1月22日まで開かれている。展示責任者の一人は日本でも人気のアントワーヌ・コンパニョン。プルーストを全く読んだことがない人でも楽しめるように趣向が凝らされた展覧会は、まるで魔法の国のように楽しむことができる。
https://www.bnf.fr


プルースト展では、プルーストの草稿をアニメーションにして推敲の過程を再現
©︎ Victoria Okada

◇初出=『ふらんす』2022年12月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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