「井上有一1916-1985 書の解放」展/鼓童 パリ公演/「スカルラッティ555」
「井上有一1916-1985 書の解放」展
井上有一氏© UNAC TOKYO 撮影:伊藤時男
井上有一は戦後間もなく世界的に高い評価を得た数少ない書家の一人。2016年の生誕100年記念大回顧展(金沢21世紀美術館)は記憶に新しいが、今回のパリ展はフランス初の回顧展。「ジャポニスム2018」の一環として、京都国立近代美術館の特別協力を得て没年までに制作された76点を厳選。どれも、井上有一が投げかけた芸術的・社会的な問題意識を表した作品だ。太い筆を使って一字を大きく「描いた」ものから、反戦・半消費社会を表明する文章を綴ったもの、そして晩年の、コンテで個人的な心情を吐露した作品などが、年代順に並ぶ。日本文化会館にて9月15日まで。その後、南仏アルビのトゥールーズ・ロートレック美術館に巡回(9月29日~ 12月17日)。http://musee-toulouse-lautrec.com/fr
鼓童 パリ公演
太鼓芸能集団「鼓童」© Takashi OKAMOTO
こちらも「ジャポニスム2018」の一環として、佐渡の太鼓芸能集団「鼓童」が7月16 ~ 21日にパリ公演を行なった。会場は、ヴァンセンヌの森とパリ植物園の自然豊かな場所に位置する「太陽劇場Théâtre du Soleil-Cartoucherie」。ここはパリ・コミューン後に新たな弾薬工場cartoucherie として建てられ、軍事に関連した波乱の歴史を経て、1970年代からは世界的演出家・俳優のアリアーヌ・ムヌーシュキン率いる太陽劇団の本拠地となっている。フランスでの和太鼓人気は高く、町の文化センターで入門コースを設けているところもあるほどだ。公演はKodo Next Generation と銘打って、次世代を担う若手が出演。腹の底からズンとくる「地の響き」ともいうべきサウンドと熱気に、観客は酔いしれた。https://www.kodo.or.jp
「スカルラッティ555」
「スカルラッティ555」開幕コンサートで18世紀のクラヴサンを演奏するパオロ・ザンズ(写真はリハーサル)© Guillaume Decalf
バッハと同じく1685年にナポリに生まれたドメニコ・スカルラッティは、ポルトガル王女のクラヴサン(チェンバロ)教師としてポルトガルに、彼女が後のスペイン王と結婚してからはスペインに定住し、555曲ものソナタを残した。その全曲をクラヴサンで、しかもコンサートで演奏しようという大プロジェクトがラジオフランス音楽祭で7 月に実現した。全コンサートは録音・動画撮影され、来シーズンから徐々に公開される。詳細はhttps://www.francemusique.fr
◇初出=『ふらんす』2018年9月号