パリで観る、開国後の日本
パリ16区に隣接したブーローニュ市にあるアルベール・カーン博物館は、19世紀半ばから20世紀初めに世界中で撮影した写真の資料館で、数年間の改修工事の後、4月初めに再オープンした。日本に関する写真資料はとくに豊富で、開国後の日本の様子を知ることができる。写真は大部分がオンライン化され、自由に閲覧できる。敷地内の有名な日本庭園でゆっくり散策するのも良い。日本関連の展覧会として、ギメ美術館での「弓と刀」展(8月29日まで)も見逃せない。
アルベール・カーン博物館の日本庭園
© CD92 - Willy Labre
パリから北に車で1時間のシャンティイ城は、最後のフランス王ルイ・フィリップの五男オマール公アンリ・ドルレアンが再建した城で、門外不出の多くの肖像画を含む絵画・古書コレクションで有名。生誕200年を迎える今年、20代の若き公の肖像画がヴェルサイユ宮殿で見つかった。キャンバスを巻いた状態で忘れ去られていたこの絵は、保存状態が悪く何箇所も破損しており、仏美術館研究修復センターが修復プロジェクトを発足させ、作業が進められている。シャンティイ城ではまた、6月から10月まで16世紀はじめに活躍したドイツの版画家デューラーの貴重な作品を集めた展覧会が開催される。
修復される若きコンデ公の肖像
©C2RMF - Philippe Salison
オルセー美術館のガウディ展は、学生時代から世界遺産サグラダ・ファミリアに至るまで、家具や内外装品も含めた総合的な芸術家としてのガウディの軌跡を追う。またプティパレではフィンランドの画家エデルフェルト(7月10日まで)と、主に19世紀末から20世紀のパリの上流社会を描いたイタリアの画家ボルディーニの展覧会(7月24日まで)が大好評。
ガウディ展ポスター
© Graphisme C. Lakshmanan, direction de la communication, EPMO
さて活発に進んでいる〈モリエール年〉の催しとして、フランス全土を巡回中の『病は気から』『強制結婚』『シチリア人』を見た。ヴェルサイユバロック音楽センターとの共同制作で、初演時の意図にできる限り忠実に、俳優、ダンサー、歌手、オーケストラが一体となって上演。簡単な舞台装置と、遊び心溢れる明るい色の衣装が印象的で、各地で大成功を収めている。
フランス全国巡回中のモリエール『病は気から』
© Hélène Aubert
『病は気からLe Malade imaginaire』は8月2日までhttps://www.france.tv/で視聴可能。
アルベール・カーン博物館 https://albert-kahn.hauts-de-seine.fr/
ギメ美術館 https://www.guimet.fr/
シャンティイ城 https://chateaudechantilly.fr
◇初出=『ふらんす』2022年6月号