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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

デッサンの都になったルーアン

 ノルマンディー地方の首都ルーアンは、5月半ばまで「デッサンの都」と化している。ルーアン美術館を中心に、この地域の美術館連合が共通テーマとしてデッサンを掲げ、多角的に掘り下げるマルチ展覧会を展開しているのだ。ルーアン美術館では、ある夫妻が1940年代から約40年にわたって収集した約6000点のデッサンから厳選した作品を紹介。夫妻のコレクションは、15世紀から20世紀までおよそ500年に及ぶデッサンの歴史を網羅するもので、その全てがルーアン美術館に寄贈された。これにより同館は、世界でも屈指のデッサン・コレクションを有する美術館の一つとなった。注目すべきは、本展の構想から実現に至るまでの全工程を、ルーヴル美術学校の学生10人が担った点である。これは同校のカリキュラムの一環として、博物館学、作品管理、作品出自など異なる分野を専攻する学生たちがチームを組み、一つの展覧会を作り上げていく実践的な取り組み。現役学芸員の監督のもと、学生たちは実際の現場で貴重な経験を積むことができる。チームのうち2人はプレス内覧会での解説も担当し、美術ジャーナリストとの活発な意見交換の場となった。


ルーアン美術館のデッサン展より「ハルピュイア」(作者不詳、オランダまたはドイツ)© Victoria Okada


ルーアン美術館のデッサン展よりVue d’Isola Bella, 18世紀末 © Louis-François Cassas

同じくルーアン美術館では、Jamais trop rococo !と題したロココをテーマにしたミニ展覧会も開催されている。ロココ様式の起源から、歴史を経て、タトゥーをはじめとする現代に息づくロココ風デッサンまでを紹介する内容だ。とりわけ、タトゥーを肌に描かれる芸術的なネオロココ・デッサンの系譜として捉えている点が特徴的で、関連企画として3月には地元のタトゥーアーティストを招き、なんと展示室内でロココ・モチーフのタトゥー実演会が行われる予定。


Jamais trop rococo ! 展 の様子 © DR

 市内のフローベール博物館では、フローベールの小説に芸術性の高い挿絵を描いたジョルジュ゠アントワーヌ・ロシュグロッスの作品を展示している。フローベールは生前、「自分が存命中は小説に挿絵を施すことを許さない」と断言していたが、ロシュグロッスはその死後、作家の文体と響き合う、創造性豊かなデッサンを生み出した。また、かつて紐の生産工場だった建物を利用したCorderie Vallois博物館では、「布に描くデッサン」展が開かれている。同館が所蔵する1870年頃に制作された約2800点のテキスタイル・デッサンの中から、特に興味深い作品が選び出され、展示されている。


フローベール博物館の展示風景 © Guillaume BRIERE SOUDE


Corderie Vallois博物館「布に描くデッサン」展で展示されているテキスタイル・デッサン © DR

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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