趣向を凝らした、夏の新しいイニシアチブ
6月21日に劇場やコンサートホールの半数定員制が解除され(ただし個人、グループの両側を1席ずつ空けるよう奨励されている)、翌22日には映画館が再開したフランス。しかし夏のフェスティバルは、中止または来年に延期というケースが多い。そんな中で、こういう時だからこそアーティスト支援のための新しい催しをと、次々と工夫を凝らしたイニシアチブが取られている。
パリ市東北部のヴィレット公園は、55ヘクタールの敷地内に科学産業博物館、コンサートホール、球形オムニマックス映画シアター、大イベント会場などを擁する一大文化施設。この全体を使って、7月2日から1か月間(一部10月まで)「芸術家たちの平原Plaine d’artistes」と銘打った多彩な催しが行われた。振付師のプレルジョカージュ、アーティストのボルタンスキなどがワークショップを一般公開したほか、「ジャム・カプセルJam Capsule」と呼ばれるモニュメンタル視覚・聴覚体験など、実験的な試みを多く取り入れた画期的なイベントとなった。
Plaine d'artistes
©︎Christophe Raynaud de Lage
恒例のパリ・プラージュは、7月18日、ヴィレット人工湖に浮かべた小舟を客席に見立てた野外映画上演会で開幕。セーヌ川のメイン会場とともに8月末まで開催された。
小舟で楽しむ野外映画上映
©︎Paris Plage
ヴェルサイユ宮殿近くの「王の菜園」では、7月11日から8月2日まで室内楽の野外音楽祭が開催。大打撃を受けたクラシック音楽家に少しでも演奏の機会を与えようと、なんと3週間で立ち上げられ、70人の国際的アーティストが参加した。
王の菜園での野外コンサート
シャトレ劇場は7月はじめにAprès, demain(「そして、明日」の意。「明後日après- demain」にかけている)と題したデジタルフェスティバルを開催。社会討論会、音楽作品の初演、パフォーマンス、アトリエ、一般参加によるコーラスや絵画展などジャンルを超えた企画を実現した。
世界最大の演劇祭アヴィニョン祭も、「アヴィニョンの夢Un Rêve d’Avignon」と題するデジタルヴァージョンを公開。さらに10月末には「アヴィニョン週間La semaine d’Avignon」として7つの演劇を世界初演・フランス初演する。
7月はじめの内閣改造で文化大臣に就任したロズリーヌ・バシュロー氏は大のオペラファン。ラジオや専門サイトでオペラ評を発表していたほどで、アーティストにも知己が多く、彼らの状況をよく知る人物として大きな期待が寄せられている。
◇初出=『ふらんす』2020年9月号