2017年6月号 庭・公園・庭園
庭・公園・庭園
春の到来と時を合わせて、緑がまばゆい2つの展覧会がパリで開催されている。1つはグランパレのJardin展。Jardinという言葉には、宮殿と一体になった豪華な庭園から都会の小さな家の庭先まで多様な意味とニュアンスがあるが、展覧会では中世・ルネサンスから現代、そして近未来まで、絵画を中心に、デッサン、写真、インスタレーション、彫刻、庭仕事の道具、さらには土壌の見本までも網羅して、様々な庭の様子が美術でどのように取り上げられているかを見せる。期せずして、西洋世界が自然とどのように向き合ってきたかを知ることのできる機会にもなっている。展覧会のポスターに採用されているエミール・クラウスの油彩画《年老いた庭師》が、今にも語りかけてくるようで新鮮。7月24日まで。グランパレは7月23日まで、「美術小史 Une brève histoire de lʼart」と銘打ったMOOCを開講。16世紀から20世紀までの5回シリーズで、インターネットで誰でも無料で受講できる。 www.mooc-brevehistoiredart.com
Émile Claus, Le Vieux Jardinier, 1885, Huile sur toile
©Liège, Musée des Beaux-Arts / La Boverie
もう1つの展覧会はリュクサンブール美術館の「エラニーのピサロ」展。パリでは35年ぶりの大々的なピサロ展で(マルモッタン美術館でも7月2日までピサロ展を開催)、54歳だった1884年から死の年の1903年まで住んだ、セーヌ川支流沿いのエラニー村での戧作活動を紹介。自然に囲まれたこの村で彼が精力的に描いたのは、光に満ちたのどかな田舎の光景だった。こぼれんばかりの光と鮮やかな緑が印象的な画面には、自然に対する愛情が溢れている。7月9日まで。
ストラスブールの《トロイアの人々》
ベルリオーズの2部作オペラ《トロイアの人々》は、その規模の大きさと斬新さで上演が極めて困難な作品として名高い。ストラスブール国立交響楽団は、4月中旬、3つの合唱団とスター歌手を動員し、今シーズンの目玉演奏会として総勢350人のアーティストによるコンサート形式での上演を行った。豪華な声の共演と、ベルリオーズならではの音響効果あふれるオーケストラが聴衆を釘付けに。コンサートはライブ録音としてワーナーレーベルからリリース予定。
◇初出=『ふらんす』2017年6月号