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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

ベートーヴェン生誕250年

 1770年生まれのベートーヴェンは今年生誕250年。世界各地で様々なコンサートや催しが行われている。しかし新型コロナウイルス感染拡大で、執筆時の現在(3月中旬)、祝祭の催しもストップしてしまった。今回はそれ以前に行われたコンサートから、少し趣の変わったものを紹介しよう。

 2月終わりにセーヌ・ミュジカルで行われたコンサート「Pastoral for the planet」。巨木バオバブの中で幸せに生活する人間たちが環境破壊に直面し移住を余儀なくさせられるが、最後には希望のメッセージで終わるというストーリーつきだ。ベートーヴェンの時代の作曲家たちの、嵐や洪水を想起させる音楽のあと、交響曲「田園」で締めくくられるコンサートは、大きなバオバブを模した舞台装置と、舞台のあちこちからぶら下がるデッサン、布、オブジェ、そして照明を駆使した演出で、専用アプリで観客も参加できる。カタルーニャの演出家集団ラ・フラ・デルス・バウスの舞台コンセプトによる全く新しい形のコンサート。


Pastoral for the planetの舞台風景

 パリのシャンゼリゼ劇場で日曜朝11時から開かれるConcerts du dimanche matinでは、パキスタン系のピアニスト、シャニ・ディリュカShani Dilukaが、インドの伝統楽器シタールとタブラを奏する二人の巨匠と共演。ベートーヴェンの有名な2曲のソナタ、「月光」と「アパッショナータ」の各楽章の前にインド音楽のラガや即興を置いて、イントロダクションの役割を果たすという趣向。ベートーヴェンとインド音楽には全く関連がないように思われるが、実はベートーヴェンはウパニシャッド哲学や仏教に興味を示していた痕跡があり、それを示す記述も残っている。その抜粋を朗読しつつ、東洋の伝統音楽と西洋の芸術音楽がどういう接点を持ち得るかを、見事に示したコンサートと言えるだろう。


シャニ・ディリュカ(真ん中)と二人の巨匠
© Mathieu Tuffreau

 その曲が作曲された当時の楽器で演奏するオーケストラ、レ・シエクルLes Sièclesは、ヴェルサイユ・オペラ(ベートーヴェンの生年に開場)での4回にわたる交響曲全曲演奏会のうち、ウイルスで初回を除いて3回が中止となった。3日目の第5番「運命」と第7番の演奏会は、無観客で行われ生中継されたが、その様子がhttps://www.france.tv/france-2/で2021年3月14日まで視聴可能。

◇初出=『ふらんす』2020年5月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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