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「アクチュアリテ アート&スペクタクル」岡田Victoria朋子

フランスの文化活動再開の兆し

 先月号でお知らせした劇場占拠の勢いは衰えず、4月中旬にはベルギーやイタリアも含め150あまりの劇場に拡大している。パリのオデオン劇場では毎日建物前広場で集会が行われているほか、ソーシャルネットワークやウェブラジオなどで討論や要求を放送している。

 さて、5月以降の再開の可能性を受けて、各文化機関はさまざまなシナリオを想定して催しの開催計画を発表し出した。5月はシーズンの終わりなので、昨年中止された催しの延期開催を中心に、夏のフェスティヴァルに焦点が当てられている。その中からいくつかご紹介しよう。

 6月4~6日にフォンテーヌブロー城で行われる芸術史祭Festival de l’histoirede l’art。10回目となる今回のテーマは「喜びPlaisir」で、招待国は日本。日本人招待アーティスト(フィナーレには映画監督黒沢清のマスタークラスも予定されている)の来仏が不確かなため、一部リモート開催の予定。「芸術と外交」をテーマに、同城所蔵の日本の美術品コレクションによる展覧会も9月20日まで同時開催。
http://festivaldelhistoiredelart.com/

 パリ東駅から近郊線で30分のモーMeaux市にある第一次大戦博物館Musée de la Grande Guerreは、第一次大戦に特化したヨーロッパ最大の博物館で、実際に使用された物品のみを展示しているのが特徴。これまでほとんど知られていなかった版画家・画家のジョルジュ・ブリュイエGeorges Bruyerの回顧展が8月22日まで開かれている。自ら赴いた戦地の様子をクロッキーや版画、絵画に残したが、そこには日本の手法の影響も見られる。最も有名な、24作品からなる一連の版画は、今回初めて全点を一堂に展示。常設スペースには、自身は戦争未体験だが、祖父から聞いた物語をもとに戦時中の人々の日常をカラフルに描いた、アンリ・ランディエ展も併催。
www.museedelagrandeguerre.eu

 ボルドーでは、世界的に知られる弦楽四重奏祭が新たなコンセプトで生まれ変わり、5月20日から6月8日まで開催。音楽祭の名前もVibre !(共鳴の意)と変更し、開催地も市内だけでなく近郊のワイン蔵などにも拡大。2022年5月には、室内楽の分野で精力的に活躍する演奏家を審査員に招き、やはり世界的に権威ある弦楽四重奏コンクールが開催される。
https://quatuorsabordeaux.com/

◇初出=『ふらんす』2021年6月号

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著者略歴

  1. 岡田Victoria朋子(おかだ・ヴィクトリア・ともこ)

    ソルボンヌ大学音楽学博士、同大学院客員研究員。国際音楽評論家協会理事。翻訳家

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