フランスの文化助成と活動再開
夏季休暇後にCOVID-19感染患者数が再び大きな上昇を記録し、文化セクターへの打撃が続く9月14日、バシュロー文化相はパリ・オペラ座、パリ・フィルハーモニーホール、オペラ・コミック劇場に合計約9000万ユーロの助成金を支給することを発表した。これは8月末に、舞台活動に合計4億3200万ユーロを捻出すると約束したことを受けての処置。今回の助成は、9月3日に政府が発表した20億ユーロの文化助成金の一環でもあり、最終的にはそのうち総額6億1400万ユーロが政府からの直接助成金として「文化遺産と創造」のために充てられる。受け取りの対象の中には、モン・サンミシェル、ルーヴルやオルセー美術館など約100の重要文化財級の機関も含まれている。
劇場などでは身体的距離の確保にいまだに座席半数が義務となっているにもかかわらず、TGVや地方急行線は満席で演劇やコンサートに相当する時間(1~3時間、時にそれ以上)を旅するのが現実で、腑に落ちない事態となっている。
そんな状況ではあるが、劇場は1~2か月単位の修正プログラムを組み、美術館なども都市閉鎖中に延期されていた展覧会が開幕し、徐々に活気が戻ってきている。秋の展覧会の第1弾として、ジヴェルニー印象派美術館の「自然のアトリエ」展、パリ日本文化会館の「美の秘訣」展、国立図書館のジョゼフ・クーデルカ「廃墟」写真展を見た。ジヴェルニーの展覧会はノルマンディー印象派フェスティヴァルの参加展覧会で、アメリカのテラ財団コレクションから、アメリカ人画家による印象派絵画の変遷をたどるもの。ノルマンディーで印象派に触発されたアメリカ人画家たちが自国でどのように作風を発展させていったかも見ることができ、興味は尽きない(2021年1月3日まで)。パリ日本文化会館での展覧会は浮世絵に表現された化粧や髪結いから日本女性の美の秘密を探ろうというもので、当時の化粧道具やかつらも展示され大盛況を博している(2021年2月6日まで。11月28日に展示品入れ替え)。クーデルカは、日本ではプラハの春の写真家として有名だが、30年間、地中海沿岸の遺跡の廃墟をモノクロの大パノラマ写真で撮り続けた。その170点を一堂に集めたテーマ回顧展。写真もさることながら、会場中央に吊り下げられた40点の作品が作り出すリズムが美しい。12月16日まで。
ジョゼフ・クーデルカ「廃墟」写真展。筆者撮影
◇初出=『ふらんす』2020年11月号