音楽コンクールの舞台裏

「ピアノキャンパス」国際音楽コンクール 受賞者 © V. Okada
昨年のショパン国際ピアノコンクールをはじめ、大規模で知名度の高いコンクールは日本でも広く知られているが、世界には規模も水準も多様な音楽コンクールが存在し、その数は1000を超えるとされる。パリから郊外急行線で約1時間のポントワーズで毎年開かれる「ピアノキャンパス国際コンクール」は今年で24回目を迎えた。約70名の応募者から映像審査で12名がセミファイナルに選ばれ、現地で各自30分のリサイタルを演奏する。内容は課題のフランス作品に加え、18世紀、19世紀、20・21世紀からそれぞれ1曲を自由に選ぶ構成。ファイナルに残った3名が委嘱新作の世界初演と課題協奏曲をオーケストラと共演する。全日程が一週末で完結する小規模な催しながら、ヨーロッパ、とりわけフランスで学ぶ学生が多く応募し、受賞者には現在若手・中堅として活動する演奏家の名が並ぶ。日程の短さと協奏曲共演の機会から、20歳以下の学生(参加資格年齢は16歳から25歳)が初めての国際コンクールとして参加する例が多いのも特徴だが、近年は楽器を問わず若手の水準が著しく向上しており、セミファイナル進出にも相当の力量が求められる。今回、審査員として12名全員を聴いたが、その完成度の高さは印象的で、将来主要国際コンクールに進む水準に達した奏者も含まれていた。審査員として招かれたのは今回で2度目だが、QRコードによる完全匿名投票が導入されるなど、技術面で大きな変化が見られた。点数制ではなく各審査員が上位3名を選び、過半数に達しない場合は最大2回まで再投票、それでも決しない場合は審査員長が判断する。投票内容は本人以外には共有されず、公正性の高い方法と感じられた。
さて、南仏で開催される世界でも有数のピアノ音楽祭「ラ・ロック・ダンテロン」は、2月中旬の記者会見で今年のプログラムを発表し、近年のコンクール受賞者を積極的に招く方針を柱の一つに据えた。受賞はひとつのステップであり、その後に演奏家としてどのように成長するかが問われるが、受賞によって演奏機会が広がるのも事実。とりわけ「ラ・ロック・ダンテロン」は、若手に限らず多くのピアニストにとって一度は立ちたい舞台として知られる。その場で若くして演奏の機会を得ることは、コンクール受賞がもたらす恩恵の一つと言えるだろう。

「ラ・ロック・ダンテロン」の野外メインコンサート会場(2025年)© Valentine Chauvin



