デッサンの春
今年2月号でルーアンでのデッサン展をいくつか紹介したが、この春はデッサンを中心とする多くの展覧会がフランス各地で開催されている。「Le printemps du dessin(デッサンの春)」と銘打ち、展覧会やパフォーマンス、コンサートなどを6月21日まで全国で展開する催しがそれだ。9回目の今年は規模をさらに拡大し、参加100団体のうち、日本での重要文化財(建築)に相当するmonuments nationauxが10団体、新規参加は53団体にのぼる。例として、世界最大級の潮の干満差で知られるブルターニュ地方サン・マロのCité du dessinでは、6月18日まで、制約の多いデッサンによる多様な風景表現を紹介する「Penser le paysage」展が開催。ロワール地方のトゥール市立美術館では、3月26日夜、開催中のカミーユ・クローデル展の一室で、クローデルの彫刻をモデルに一般参加者が思い思いにクロッキーを楽しむ催しが行われた。また、12世紀の城と中世最大の『黙示録』タペストリーで知られるアンジェでは、6月8日から12日まで、パリ拠点のアーティスト盛圭太の個展をアルトテークにて開催。さらにストラスブール国際イラストセンター(トミ・ウンゲラー美術館)で、F’murrrの名で知られるイラストレーターの回顧展が8月30日まで開かれている。1970年代にヒットしたBDの作者で、名前は知らなくともその絵は誰でも一度は目にしたことがあるほど広く知られている。
■Le printemps du dessin(デッサンの春)
https://www.printempsdudessin.com/
■盛圭太氏
https://keitamori.com/index.html
■ストラスブール国際イラストセンター(トミ・ウンゲラー美術館)
https://www.musees.strasbourg.eu/musee-tomi-ungerer

サン・マロの展示より © Olivia Etienne, Cabane dans la forêt, détaill, 2023 120 x 250 cm, fusain et pastel sur papier

アンジェ、アルトテーク所蔵の盛圭太作品 Artothèque d’Angers © Keïta Mori

ストラスブールイラストセンターの展覧会ポスター Musée Tomi Ungerer - Dessin affiche expo MTU, Hi-Yo, c’est l’écho © Camille Potte, 2025
さて、パリ近郊シャンティイ城では、イタリア特集の一環として「イタリア17世紀素描展」が開催中だ。展示作品約50点の半数は同城所蔵のオーマール公コレクションに属する素描である。公の数千点に及ぶコレクションの中でもこの時代のイタリア素描・版画は稀少で、質の高さと来歴の確かさで際立っているが、その全貌が初めて公開される貴重な機会だ。後期マニエリスムからボローニャ派・ローマ派の古典主義に至る流れを軸に、ナポリ派やスペイン派の稀少作も含む。フェデリコ・バロッチ、グエルチーノ、ドメニキーノらを中心に、絵画ギャラリーに常設展示の油彩などとの関係を通じてバロック芸術の広がりと質の高さを示す、美術ファン必見の展覧会。6月14日まで。その後はナポレオンの妹でナポリ王妃のカロリーヌ・ミュラのコレクション展が。ナポレオンが最後に使用したものと最近鑑定で確定された帽子の展示が予定されている。
■シャンティイ城博物館の学芸員による展覧会の紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=lXciLvs3KCY&t=33s

シャンティイ城の「イタリア17世紀素描展」から Agostino Carracci, Trois études de femmes drapées, vers 1600 © GrandPalaisRMN-Domaine de Chantilly – Sylvie Chan-Liat



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