ふだんスポットの当たらない女性像を描いた女優映画

La Vie d’une femmeのポスター
秋の映画シーズンは、女優映画の紹介から始めたい。いまフランスでもっとも評価されている俳優のひとり、レア・ドリュッケールの主演作が、病院で働く外科医を描いたLa Vie d’une femme(女の一生)だ。外科部門の責任者でもあるガブリエルには夫と、介護が必要な母親がいるものの、その生活は仕事を中心に回っている。毎日目が回る忙しさながら、仕事に誇りを持つ彼女はまんざらでもない。そんなとき、小説を書くためのリサーチで病院を訪れた作家のフリダ(メラニー・ティエリー)に出会い、「働く戦士」ガブリエルに思わぬ変化がもたらされる。
シャルリーヌ・ブルジョワ゠タケ監督がガブリエルについて、「たとえばアンナ・カレーニナのような女性とは対照的に、仕事も私生活も欲しいものは手に入れようとする、現代的で情熱的な女性」と語るように、野心に満ちた彼女にはどこか権威的なところもある。プライベートでも自然に自分がイニシアチブを握るようなタイプと言えるだろうか。だが、そんなガブリエルがフリダと関係を持つことで、初めてその土台が揺らいでいく。ドリュッケールは抑制された演技で、自信家のガブリエルを嫌味なく演じるとともに、その後の彼女の心理的な変化も繊細に表現してみせる。有能で妥協を許さず、世間的にも評価されてきた女性が人生の後半期で知る、挫折や虚無感。映画であまり描かれることのない女性像を描いた、味わい深い作品だ。
Garance(ギャランス)は、ジャンヌ・エリー監督が、「ふだんスポットライトの当たらない、俳優たちにオマージュを捧げたかった」と語る作品。売れない舞台俳優のギャランス(アデル・エグザルコプロス)は、あちこちで小さな役を見つけては食い繋いでいる。だが彼女には、アルコール依存症という深刻な問題があった。ストレス発散から、単純にハメを外して、あるいは舞台へ上がる緊張から、ギャランスの依存症はだんだん度を超えていく。そんな彼女の毎日を追う、いたってシンプルな作りだが、エグザルコプロスの全身全霊を捧げたような演技が力強く映画を牽引する。「彼女はとても“シネマジェニック”にして、熱い血のたぎる動物のようで、観る者の目を釘付けにする」と監督が評するのも頷ける。アルコール依存の問題と、芽の出ない俳優人生の辛さを描きながらも、どこか希望を感じさせるところも救われる。



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