フランス人が見た、女性ふたりの関係性

『急に具合が悪くなる』フランス版ポスター
今年のカンヌ国際映画祭で主演のヴィルジニー・エフィラと岡本多緒がそろって女優賞を受賞した、濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』が、フランスで8月12日に公開を迎えた。この時期はフランスではバカンス真っ最中で、話題作の封切りのタイミングとしては妙な気もするが、アメリカのブロックバスターとフランス産の他愛のないコメディが並ぶなか、1週目の動員数が9万人を超えた。これは前作『悪は存在しない』の初週の動員数(69,187人)を上回り、濱口作品のなかではもっとも好成績のスタートとなった。3時間16分の尺により1日の上映回数が減ることを鑑みても、大健闘である。
批評家の評価も高く、カイエ・デュ・シネマ誌、ル・モンド紙など、5点満点を出しているところもある。そのほとんどは、死を見つめたテーマとはかけ離れた映画の持つバイタリティ、希望を感じさせるヒューマニズムと、演劇性やワークショップなどを取り入れてそれをドキュメンタリー的な要素と融合させる、特異な個性を持った監督の演出力を称えている。
日仏2カ国語が飛び交う本作は、ところどころに文化の違いを感じさせる描写があり、それぞれのカルチャーを学ぶ観客にとっても興味深いに違いない。わたしにとって、フランス人の反応のなかでもっとも印象的だったのは、主役のキャラクター、マリー゠ルーと真理の関係に対する解釈だ。カンヌでもパリでも、このふたりの女性の関係を、友情を超えた恋愛的な感情を抱いたもの、エロティックな関係性であると受け取る批評家の声があった。最初に聞いたときは、「そう見るか!?」と驚いたが、たしかに足をマッサージし合うという、欧米人にとってはふだんあり得ないような肉体的接触や、短時間で急激に関係性を深めて死を看取るまでに至るのだから、そう思われても不思議ではないかもしれない。おそらくは濱口監督自身も、そんな可能性をまったく否定はしないだろう。
とはいえ、人間関係というとすぐに「性的欲望」と結びつくようなフランスの土壌を個人的には強く意識させられたのだが、果たして日本でもこのような見方は少なくないのだろうか。いずれにしろ、観る者にさまざまな解釈の余地を残すという点も、成熟した映画の証と言えるのではないだろうか。



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