パリのシネマテークがオンライン視聴プログラムを開始
マクロン大統領の4月13日の演説により、フランスでは外出制限令が5月10日一杯まで延長され、大人数が集まるイベントやフェスティバルの類いは7月半ばまで禁止されることが決まった。これによって当初6月末への延期を予定していたカンヌ国際映画祭は新たに見直しを余儀なくされ、6月のアヌシー国際アニメーション映画祭も、マーケットなど一部をオンラインで開催する運びとなった。
映画館が1か月以上に及ぶ営業停止を迎えている映画産業も、窮状を訴えている。こうした状況下でCNC(国立映画映像センター)は、政府と提携した経済的サポートをおこなうことを発表した。と同時に、これまで「メディア・クロノロジー」と呼ばれる規定にあった、劇場公開から4か月はプラットホームやDVDのリリースを禁止する項目を、特別に解除することを決定した。
これにより、公開されて日が浅いオリヴィエ・アサイヤスのCuban Network(「キューバ・ネットワーク」)やヴァレリー・ドンゼッリのNotre Dame(「ノートルダム(我らが淑女)」)をはじめ、非フランス映画も含む31作品が、仏国内限定のプラットホームで観られることになった。ただし劇場公開にこだわり、夏以降に再リリースという形をとる作品もある。
一方、外出制限下に対応した独自のサービスを始めたところもある。そのなかでも特筆すべきは、パリのシネマテークが開始したオンライン無料視聴プログラムだ(https://www.cinematheque.fr/henri/)。毎晩8時半に、シネマテークの修復コレクションから選ばれた旧作がオンラインで上映される(あとからでも視聴可)。ただでさえ観られる機会が少ない秘蔵の作品であるうえに、無料で、しかも日替わりで観ることができるのは、さすが膨大なコレクションを誇るシネマテークならではと言える。4月9日の初日には、映画黎明期のフランスが誇る巨匠、ジャン・エプスタインの『アッシャー家の末裔』が披露された。
『アッシャー家の末裔』(1928)
© La Cinémathèque française
海外からもアクセスできるので、自宅にいながら労せずしてシネフィルになれるこの機会に、ぜひ恩恵に授かってはいかがだろう。
◇初出=『ふらんす』2020年6月号