銀幕のアイコンを超えた、時代のシンボル

昨年末、ブリジット・バルドー(91歳)が亡くなったときの反響は、あらためてその存在の大きさを物語っていた。新聞各紙は一面とともに何ページにもわたり追悼記事を組み、「世界的映画スターにして動物愛護家」「フランス映画のアイコン」「性の解放と女性の自由の象徴」といった見出しが並んだ。マクロン大統領は、「彼女は自由な人生を体現していた。フランスの存在、普遍的な輝き。わたしたちは世紀の伝説を悼む」と追悼。1973年にバルドーが俳優業を引退してから半世紀も経つことを考えれば、いかに例外的な存在であったかがわかる。
もっとも、晩年は極右政党を支持したり、イスラム教や同性愛者に対する偏見、MeToo運動に対する懐疑的な発言などで物議を醸し出した。だがそれでも、その率直で何ものにも縛られない生き方は多くの人を魅了した。実際、教育に厳しいブルジョワ家庭に育ち50年代にデビューしたことを考えると、彼女の勇気と大胆さは驚きである。
15歳のときに、当時は写真家でマルク・アレグレ監督の助手をしていたロジェ・ヴァディムと出会い、3年後にようやく親の承諾を得て結婚。彼がメガホンを握る『素直な悪女』(1956)で世界的に一世を風靡したことはあまりに有名だ。アメリカでは、マリリン・モンローと並ぶセックスシンボルとして目され、フランス映画界でもっとも世界的に人気を得た存在となる。たしかに、本作の彼女がバーで踊り狂うシーンは、動物的ともいえる肉感的エロティシズムが立ちのぼる。モンローに代表されるハリウッドの「作られた美」の時代から、自然で解放的な美へと、時代の基準を塗り替えた(最後まで美容整形にも反対していた)。
およそ20年間のキャリアのなかで他に代表作を挙げるなら、ジャン・ギャバンと共演したクロード・オータン゠ララの『可愛い悪魔』(1958)、アンリ゠ジョルジュ・クルーゾーの『真実』(1960)、ルイ・マルの『私生活』(1962)と『ビバ!マリア』(1965)、ジャン゠リュック・ゴダールの『軽蔑』(1963)、得意の歌唱を披露したロベール・アンリコの『ラムの大通り』(1971)あたりか。『軽蔑』ではとくにその演技力が評価されたものの、もともと俳優業にそれほど興味がなかったことと、つねにパパラッチやファンに追いかけられる生活にうんざりし、40歳を前に引退して動物愛護の活動に専念。その道でも大きな功績を遺した。まさに一時代の終わりを感じさせる。



