フランス映画の未来を担う10人は?
「パビチャ 未来へのランウェイ」で注目されたリナ・クードリ
国外に向けたフランス映画の復興を目指す機関、ユニフランスが主催する、「10 to watch」という座談会が年明けに開催された。フランス映画界の新しい才能を担う10人を選び、紹介したものだ。この顔ぶれが現在のフランス映画の多彩さを反映していたので取り上げたいと思う。
おそらく10人のなかで一番日本でも知られているのはリナ・クードリだろう。『パピチャ 未来へのランウェイ』で注目され、ウェス・アンダーソンの『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ・カンザス・イヴニング・サン』でハリウッド・デビュー。新作は『三銃士』が待機している。
米/仏のハーフであるレベッカ・マルデールは、国立劇場コメディ・フランセーズの団員で、映画界でも引っ張りだこの実力派だ。オリヴィエ・ダアンのSimone, le voyage du siècleで若き時代のシモーヌ・ヴェイユを演じ評価された。次回作はフランソワ・オゾンのMon Crime。この作品で彼女と共演したナディア・テレスキェヴィッチも大注目株。ポーランド人の父とフィンランド人の母を持つフランス生まれで、2022年のカンヌに出品されたヴァレリア・ブルーニ・テデスキのLes Amandiersでは、若きテデスキを下敷きにしたヒロインに扮した。
マルチニック育ちのセネガル人、アナベル・ラングロンヌは、レオノール・セライユ監督(『若い女』)の新作Un Petit frèreで、運命に翻弄されるヒロインの半生を演じている。
ケベック出身のシャルロット・ル・ボンは女優として『ムード・インディゴ うたかたの日々』や『イヴ・サンローラン』などで知られるが、2022年に長編Falcon Lakeで監督デビューを果たした。女性監督はもうひとり、アニメーションと実写をまぜたユニークなコメディTout le monde aime Jeanneで長編デビューしたセリーヌ・ドゥヴォーが並んだ。
カンボジア系のダヴィ・チュー監督は、2022年のカンヌのある視点部門に出品されたRetour à Séoulで審査員賞を受賞した。
男優として選ばれたのは3人。Netflixの『アテナ』から、ジェームズ・ボンド最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』まで幅広く活躍するアルジェリア系フランス人のダリ・ベンサラ。『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』で注目を浴び、新作スリラー、La Nuit du 12で新境地を開拓したバスティヤン・ブイヨン、そしてクリストフ・オノレに見出され、彼の新作Le Lycéenの演技で、サン・セバスチャン映画祭の最優秀主演賞を受賞したポール・キルシェ。ちなみに彼は、『トリコロール/赤の愛』で知られるイレーヌ・ジャコブの息子にあたるサラブレッドだ。
こうしてみると10人中7人がフランス以外のルーツも持つ。彼らの活躍が新しいフランス映画を生み出していくことに期待したい。
◇初出=『ふらんす』2023年3月号