コロナ下の、新生セザール賞
コロナ禍のもと、3月12日に開催された第46回セザール賞授賞式。この原稿を書いている時点では、まだ受賞者がわからないものの、ノミネートを通して昨年の話題作を振り返りたい。
約5か月半映画館が閉館していた2020年は、公開を延期する作品が相次ぎ、興行収入が前年比でマイナス70パーセントと激減。だがリリース作品にとっては、逆に賞レースで競争率が減る結果となり、セザールのノミネートは3作が他を圧する形となった。エマニュエル・ムレのLes choses qu’on dit, les choses qu’on faitが最多13、フランソワ・オゾンのÉTÉ 85とアルベール・デュポンテルのAdieu les consが12。続いてキャロリーヌ・ヴィニャルのAntoinette dans les Cévennesが8、セバスチャン・リフシッツのドキュメンタリー、Adolescentesが6ノミネーションとなっている。
監督賞候補はムレ、オゾン、デュポンテル、リフシッツに加えADNのマイウェンが入った。主演男優賞は自作に主演したデュポンテルの他、ランベール・ウィルソン、サミ・ブアジラ、ジョナサン・コーエン、ニルス・シュナイダーが入選。主演女優賞には初監督作部門でノミネートされたフィリッポ・メネゲッティ監督Deuxのバーバラ・スコヴァとマルティーヌ・シュヴァリエが並んだ他、ムレ作品のカメリア・ジョルダーノ、デュポンテル作のヴィルジニー・エフィラ、ヴィニャル作のロール・カラミー。カラミーは下積みが長かったものの、円熟の40代を迎えたいま、売れっ子に。本作では夏のバカンスで不倫相手を追って旅立ち、旅先でアドベンチャーを繰り広げるヒロインを、ユーモアと哀愁を交えてチャーミングに演じている。これが長編2作目にあたるヴィニャル監督は、自身で脚本も執筆。アラフォー・シングル女性の孤独と焦りを描きながら、人間味溢れるおおらかな女性讃歌を奏でている。
授賞式では例年、前年に亡くなった映画人たちにオマージュが捧げられるなか、今回はとくにミシェル・ピコリを悼み、彼がロミー・シュナイダーと共演した『すぎ去りし日の…』がポスターに選ばれた。
昨年はその権威主義的な姿勢が批判を受け、長年の運営メンバーが辞任して今年から一新したセザールだが、今後そのカラーがどう変化していくのかも、興味深いところだ。
セザール賞ポスターに選ばれた『すぎ去りし日の…』
◇初出=『ふらんす』2021年4月号