2018年2月号 2017年の話題作
毎年この時期は、前年の公開作を対象にした賞レースの話題で盛り上がる。フランスでもっとも権威あるものとされるのはセザール賞。今年の授賞セレモニーは3月2日で、ノミネートの発表はちょうどこの号が出る1月下旬だ。その前に、アメリカで言えばゴールデングローブ賞にあたる、フランスの外国人記者クラブの会員によって選ばれるリュミエール賞があり、先日こちらのノミネーションが発表になったので、今回はそれをもとに昨年の話題作を振り返ってみたい。
総合的に評価の高い作品は、以前この欄でもご紹介したロバン・カンピヨの『BPM ビート・パー・ミニット』、マチュー・アマルリックのBarbara(バルバラ)、アラン・ゴミスの『わたしは、幸福(フェリシテ)』、アルベール・デュポンテルのAu revoir là-haut(天国にさようなら)、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの“最強のふたり”コンビによるLe sens de la fête(パーティのセンス)あたり。トレダノ&ナカシュの新作は、結婚式の裏方を描いたコメディで、『最強のふたり』のような実話でない分、いささか誇張されたキャラクターが揃いすぎている感があるものの、主演のジャン=ピエール・バクリは抑えた演技で男優賞にノミネートされた。
Barbara(バルバラ)
アンヌ・ヴィアゼムスキーがゴダールとの生活を元にした小説の映画化であるLe Redoutable(恐るべきもの)は、ミシェル・アザナヴィシウス監督と、ゴダール役のルイ・ガレルがそれぞれ監督と男優のカテゴリーでノミネートされている。他に評価の高い男優は、『永遠のジャンゴ』のレダ・カテブ、ダニエル・オートゥイユ、スワン・アルローなど。女優ではジャンヌ・バリバール、ジュリエット・ビノシュ、シャルロット・ゲンズブール、エマニュエル・ドゥヴォスらお馴染みの名前が並ぶ。これらの面子はセザール賞でもノミネートされそうだ。
2017年はまた、鮮烈な印象をスクリーンに刻んだ若手の活躍も目立った。『BPM ビート・パー・ミニット』のナウエル・ペレーズ・ビスカヤートとアルノー・ヴァロワ。Jeune femme(若い女性)のレティシア・ドシュ、アンヌ・フォンテーヌの新作、Marvin ou la belle éducation(マーヴィン、または素敵な教育)に主演したフィネガン・オールドフィールド、グザヴィエ・ボーヴォワの新作『ガーディアンズ』のアイリス・ブリー、Grave(深刻)のギャランス・マリリエら。
ドキュメンタリー部門の最有力候補はアニエス・ヴァルダと写真家JRによるVisages Villages(人々、村々)か。ヴァルダは昨年11月、米アカデミー協会から栄誉賞を授与されたばかり。89歳にしてその活躍は、未だ留まることがない。
◇初出=『ふらんす』2018年2月号