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「アクチュアリテ 映画」佐藤久理子

どうなる? 年末年始のフランス映画界事情

 10月末からついに2度目のロックダウンに突入したフランスでは、映画業界も再び混乱に陥っている。ただし今回は、経済危機が深刻になった1度目の経験から、多少規制が緩められ、映画館は閉鎖しているものの制作の現場は続行している。もっとも、新作を発表する場がなければどんどん作品が溜まるばかりではあるが。ちょうどこの原稿を書いている時点で政府の新たな発表があり、映画館再開は12月15日からとなったものの、冬休みの話題作は年明け公開に延期されたものも少なくない。

 ロックダウン直前の興行成績を見ると、公開週にトップに踊り出たのが、アルベール・デュポンテル監督・主演のAdieu Les Cons(「愚か者よ、さらば」)。医者から余命いくばくもないことを宣告されたヒロイン(ヴィルジニー・エフィラ)が、かつて生き別れた息子を探す物語と、デュポンテル扮する、リストラのショックで誤って事件を起こし警察に追われることになったサラリーマンの道程が交差する。この監督らしく、アクションとドラマとコメディが融合するとともに、『俺たちに明日はない』への目配せもあるところなどは映画通らしい。1週間で60万人の動員を集め、映画館再開後の続投が期待される。

 フランス映画祭2020横浜で披露されたMISS(原題)とアニメ作品「カラミティ(仮)」も、トップ10に入り話題を集めた。前者はミス・フランスのコンテストを目指すアレックスの物語。ただし名前が表す通りこの主人公は男性で、女性に変装し、子供時代の夢だった「ミス」になることに挑戦する。現代的なテーマを扱いながら、歌や踊り、華やかな映像でショーアップし、エンターテインメントに仕上げている。とくに本作の見どころを担っているのが、主演を務めたアレクサンドル・ウェターだ。その美しさは、ひときわカリスマ的な魅力を放つ。


フランス映画祭2020横浜でも上映されたMISS

 後者はアニメ版カンヌと言われるアヌシー国際アニメーション映画祭で、最高賞に輝いたレミ・シャイエ監督作。アメリカの西部開拓時代の伝説的な女性ガンマン、カラミティ・ジェーンの生い立ちを、シャイエ監督がみずから脚本にした。性差別や異性装に対する世の中の偏見を取り上げ、こちらも現代的な視点とメッセージを感じさせる。シャイエ監督にとって本作は長編2作目だが、今後フランスのアニメ界を担っていく存在になるはずだ。

◇初出=『ふらんす』2021年1月号

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著者略歴

  1. 佐藤久理子(さとう・くりこ)

    在仏映画ジャーナリスト。著書『映画で歩くパリ』

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