カンヌで存在感を見せるフランス映画
カンヌ国際映画祭開幕を飾ったPartir un jour
今年のカンヌ国際映画祭は、例年以上に各部門にわたりフランス映画が目立った。コンペティション部門はアフシア・エルジ、ジュリア・デュクルノー、ドミニク・モル。アウト・オブ・コンペティション部門にセドリック・クラピッシュ、レベッカ・ズロトヴスキ、マルタン・ブルブロンら5本、スペシャル部門にシルヴァン・ショメがマルセル・パニョルの半生を描いたアニメ作品やロマーヌ・ボーランジェの監督作など6本、カンヌ・プレミア部門に2本、ミッドナイト部門に1本、比較的若手が集まる「ある視点」部門に4本、さらに映画祭オープニングを飾った新星アメリー・ボンナン監督らが並んだ。
コンペ作品のなかで受賞に輝いたのは、エルジの「La Petite dernière(末っ子)」。街でスカウトされ、本作で俳優デビューを果たした主演のナディア・メリティが女優賞をさらう快挙を果たした。映画についてはフランスでの公開時に詳しく触れるとして、メリティの存在感が映画を牽引していることは疑いようがない。
ちなみに最高賞のパルムドールは、下馬評の高かったイランのジャファール・パナヒ監督の「Un Simple accident(シンプルなアクシデント)」にわたった。かつてイラン当局から拘束されていたこともあるパナヒは、晴れてカンヌの地を踏むことができただけに喜びもひとしおで、マスコミも大いに盛りあがりを見せた。
ボンナン監督の「Partir un jour(いつか旅立つ)」は、開幕と同時にフランスでも劇場公開を迎えた。カンヌはいつからか、開幕作品は国内同時劇場公開が条件となったため、近年は自然と自国の映画が多くなっている。これが長編初監督作であるボンナン監督にとっては大抜擢である。パリ・オリンピックの開会式に登場したシンガー、ジュリエット・アルマネと、『12日の殺人』や『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』で知られるバスティアン・ブイヨンが繰り広げるラブコメ・ミュージカル。パリに出て自立を目指していたヒロインが、父親の病の知らせを受け帰郷した際、学生時代に憧れていたクラスメートと再会してかつての思いが再熱するという物語。ただしストーリーや演出に新鮮味がない上、ミュージカルとしての必然性もあまり感じられず、率直に言ってカンヌ開幕作品の看板には力不足と感じた。