2023年ヒット作と2024年の話題作
ロマン・デュリスが父に扮するLe Règne animal
年が明けると賞レースのシーズンが始まる。往々にして、ヒット作と批評家の支持が高い作品は異なる場合が多いが、昨年カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いたジュスティーヌ・トリエの『落下の解剖学』は、興行的にもフランス国内で130万人の動員を記録し大健闘を果たした(昨年の興収成績の6位に位置する)。
同様に、トマ・カイエ監督のLe Règne animal(アニマル・キングダム)も批評家、一般観客ともに評価が高く、100万人を超える動員を更新中。本作は現代を舞台に、謎の病気により人々の身体が動物化するSFの要素と父子のドラマを融合した独創的な作品。ハリウッドのマーヴェル系などとは異なり、リアルなアプローチで描いているだけに、真に迫るものがある。
他に昨年ヒットした作品を挙げると、興収ベスト1に輝いたのは、アステリックスとオベリックスのシリーズ最新作 Astérix et Obélix : l’empire du milieu(アステリックスとオベリックス:中国編)で、445万人の動員。2位が俳優兼監督、フィリップ・ラショーによる人気コメディ・シリーズAlibi.com2。3位 はデュマの「 三 銃士 」をシリーズ映画化した1作目Les Trois Mousquetaires D’Artagnan(三銃士 ダルタニャン)。ちなみに続編のMilady(ミラディ)も8位に入っている。ダルタニャンにフランソワ・シヴィル、ミラディにエヴァ・グリーン、三銃士にヴァンサン・カッセル、ロマン・デュリス、ピオ・マルマイが扮した本作は、アクションとドラマチックな恋愛で彩られた娯楽作だ。
では、今年はどんな話題作が待機しているのか。本誌が出る前に公開されている注目作は、画家ピエール・ボナールとその伴侶、マルトを描いたBonnard, Pierre et Marthe(ボナール、ピエールとマルト)。「親密派(アンティミスト)」と呼ばれ、妻を描き続けたボナール(ヴァンサン・マケーニュ)と、実際はもう少し波乱に富んでいたマルト(セシル・ド・フランス)との関係を、『セラフィーヌの庭』のマルタン・プロヴォ監督が描く。
『三銃士』に対抗するかのような企画は、ピエール・ニネがモンテクリスト伯に扮するLe Comte de Monte-Cristo。プロデューサーによれば、「これまで観たことのないモンテクリスト伯になる」とのことだが、どうなるだろう。伝記ものでは、タハール・ラヒムがシャルル・アズナブールに扮するMonsieur Aznavourが控えている。