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「アクチュアリテ 映画」佐藤久理子

フランス映画人が選んだ2025年のベスト・フィルム


L’Attachementのポスター

 今年のセザール賞で、下馬評の高かったリチャード・リンクレイターの「ヌーヴェルヴァーグ」やドミニク・モルのDossier 137(ファイル137)などを尻目に、作品賞、脚色賞、助演女優賞(ヴィマラ・ポン)の3冠に輝いたのが、カリーヌ・タルデューのL’Attachement(愛着)だ。これまで取り上げる機会がなかったので、ここでご紹介しておきたい。

 本作が長編5作目となるタルデュー監督は、これまでも子供を主人公にした作品や親子の絆をテーマにした物語を描いてきたが、今回はアリス・フェルネのL’Intimitéを映画化。ひとり気ままに生きてきた50代の書店経営者サンドラ(ヴァレリア・ブルーニ゠テデスキ)が、妻を亡くした隣人アレックス(ピオ・マルマイ)の子供エリオットの面倒を見ることになったのをきっかけに、思いもよらなかった絆を育むことになる。メロドラマの要素が強いものの、サンドラとアレックスが愛人関係にはならず固い友情で結ばれたり、新しい出会いを得たアレックスが、「(妻を亡くしたばかりで)まだ早すぎるのではないか」と自問したり、はじめは迷惑がっていたサンドラが母性に目覚めたりと、各々のキャラクターが丁寧に掘り下げられていることで、真実味のある魅力的な人間模様が織りなされている。それにしても、こういうキャラクターを演じたら出色なのがブルーニ゠テデスキ。あらためて彼女の人間味あふれる演技に魅了される。

 マリー・ラフォレの娘、リサ・アズエロスが監督し、フランスで大ヒットしたソフィー・マルソー主演作『L.O.L〜愛のファンタジー〜』(2008)の、17年ぶりの続編LOL 2.0が公開された。前作で子育てに奮闘していたアンヌは50代を迎え、ようやく子供が自立して再び自由を謳歌しようとしているところ。だがそんな矢先、末娘が舞い戻り、さらに息子からは「子供が生まれるからママもおばあちゃんだ」と告げられ、嬉しいようなショックなような。一方、公園で犬を連れた同世代のナイスガイに声を掛けられ、久々に心が弾む。オールドスクールの親の世代と子供たちとのジェネレーション・ギャップが描かれ、携帯画面を用いたり、流行りの音楽を使ったりと「いまどき感」が強調された娯楽作。前作に比べると軽めで、若者ウケを狙いすぎな印象もあるが、普遍的なテーマが観客に響いているようだ。

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著者略歴

  1. 佐藤久理子(さとう・くりこ)

    在仏映画ジャーナリスト。著書『映画で歩くパリ』

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